スタルヒン球場を沸かせた最速144キロ左腕に、西武が熱いラブコールだ。プロ野球ドラフト(新人選択)会議は今日27日、東京都内のホテルで行われる。旭川龍谷高の金沢一希投手(3年)は全国的に無名の存在だが、178センチの体から繰り出す直球とスライダーは一級品。昨春旭川地区予選の旭川西戦では、8回22奪三振と秘めた能力の片りんを見せた。既に日本ハムとの2球団に調査書を提出し、運命の1日を迎えた。

 小学生の頃からあこがれてきたプロ野球の世界。その夢の実現が目前に迫った26日、通常練習を終えた旭川龍谷の金沢は目を輝かせた。「(ドラフトは)楽しみです。今はワクワクしています」。これまでは子供の夢の続きにすぎなかったが、今年に入って現実に近づいてきた。8月下旬、道内の高校生では一番にプロ志望届を提出。調査書を持参した西武、日本ハムの担当スカウトと面談した。

 140キロを超えるストレートと、切れのあるスライダーが武器だ。昨春の旭川地区予選で1試合22奪三振の快投。一躍脚光を浴びることになった左腕を視察するため、この春の同地区予選が行われた旭川スタルヒン球場には、セ・パ5球団のスカウトが集結。有力候補に挙げている西武は、鈴木球団本部編成部長と水沢スカウトが訪れた。その試合は16奪三振、1失点完投だったが、満足げな表情で引き揚げた。

 今夏まで旭川龍谷の指揮を執り、釧路市出身の金沢を育てた梅田誠前監督(40)は「スカウトからは体の強さがあり、バランスも良く、伸びる素材と評価されているようです」と話した。東北担当も兼ねる水沢スカウトは06年希望枠の岸、09年1位の菊池らを担当したベテラン。道内では07年高校4位の武隈(旭川工高)、08年4位の坂田(函館大)を見いだし、他球団がノーマークの中で指名に踏み切った実績がある。

 金沢は釧路に住む両親に、プロ志望届提出前に進路を相談。「自分の道だから、自分で選びなさい」と言われた。高校野球の2年3カ月は「あっという間に過ぎた」と言う。一番の苦い思い出は、昨夏の北北海道大会準々決勝。優勝した旭川実を相手に9回2死満塁から中前打を浴び、それが決勝点となって甲子園の夢を阻まれた。「龍谷での3年間は悔しい思いもしたけど、後悔はありません。楽しかった」。高校からプロへ、大きな夢舞台の幕が開くのを信じている。【中尾猛】

 ◆金沢一希(かなざわ・かずき)1993年(平5)6月25日、釧路市出身。野球は釧路遠矢小3年から始めた。釧路遠矢中時代は同中の軟式野球部と硬式のサンリーグ・釧路北都クラブに所属。旭川龍谷高では1年秋に背番号1で公式戦初出場、2年春を除き3年夏までエース番号を付けた。家族は両親と姉1人。