阪神の今秋ドラフト1位最有力候補にJR東日本の吉田一将投手(24=日大)が浮上していることが9月30日、分かった。ここまで桐光学園の左腕・松井裕樹投手(17)を最有力候補としていたが、チームの現状と現場の要望を考慮し、1年目から計算できる即戦力投手へ方針転換。九州共立大・大瀬良大地投手(22=長崎日大)とともに、高く評価してきた長身右腕が“最愛の人”だ。

 阪神のドラフト戦略が最終局面へと差し掛かった。西宮市内の球団事務所でスカウト会議。南球団社長、中村GMも出席した会議のテーマは「1位指名」だ。佐野統括スカウトは「1位候補の中では5、6人。ドラフト前日か、当日に決めることになると思います」と、説明した。

 阪神は今ドラフトで、ぎりぎりまで1位指名を公表しない方針。ただ、球団関係者によれば、その1位候補の中で最有力となっているのが社会人NO・1と呼び声の高い吉田だという。

 阪神はここまで甲子園を沸かせた桐光学園の左腕・松井をドラフト1位最有力に挙げていたが、ここにきて、来季の課題が先発投手であることが明確になってきた。米大リーグから熱視線を受けるメッセンジャーの去就が不透明である上に、先発の外国人補強を行う可能性は低い。ドラフトやFAでの先発補強が重要になってきた。

 そこで高校生よりも、1年目から先発入りできる可能性の高い社会人、大学の即戦力投手へと方針転換した。松井、大阪桐蔭・森友哉捕手(18)の高校生候補の1位は回避する見通しで、1位有力候補となったのが大瀬良と、吉田だった。実際、9月に入って中村GMがこの2人を相次いで直接視察し、最終チェックした。中でも最上級の評価をしているという吉田が現時点での最有力候補というわけだ。

 吉田は191センチの長身から150キロに迫る速球と鋭いスライダーとを操る本格派右腕。青森山田高では無名も、大学、社会人で頭角を現した。奈良生まれで関西出身という縁もある。中村GMが視察した22日の日本生命との練習試合では8回を3安打1失点と安定感を披露し、同GMも絶賛した。吉田はほとんどの球団が1位候補に挙げており、複数球団による競合が予想されるが、関係者によれば、最も評価の高い即戦力投手を競合覚悟で指名する方針だという。

 ◆吉田一将(よしだ・かずまさ)1989年(平元)9月24日、奈良・橿原市生まれ。青森山田では2、3年夏に甲子園出場も登板機会なし。日大を経てJR東日本に入社。日大では東都2部通算8勝5敗、1部昇格した4年秋は3勝6敗。今季は都市対抗で準々決勝日本製紙石巻戦で8回1死まで完全投球するなど活躍し、2年連続で準優勝。191センチ、90キロ。右投げ左打ち。