<運命の日を待つ(下):社会人編>◆竹下真吾投手(九州共立大-ヤマハ)

 ヤマハの最速148キロ左腕、竹下真吾投手(24=九州共立大)は、即戦力投手として、一躍ドラフト1位候補に浮上した。

 大学まで無名だった左腕が一躍、1位候補に浮上した。半年前の出来事でヤマハ・竹下真吾投手の気持ちは高ぶった。九州共立大の1年後輩にあたる広島大瀬良が4月16日にプロ初勝利。お祝いの連絡を入れると、粋なひと言が返ってきた。

 「プロで待ってますよ」

 大学時代は大瀬良のほか、同学年にロッテ川満がいたため公式戦登板は「4年の秋で10試合6イニングくらい」だった。それでもプロ入りの目標は捨てなかった。ヤマハの面接では「2年でプロに行きます」と断言していた。勝負の2年目となった今季、「アピールするなら本大会しかない」と意気込んだ都市対抗予選では、好投もチームは出場を逃した。だが竹下は、ホンダ鈴鹿の補強選手でチャンスを得た。

 普段と違う環境が功を奏した。都市対抗前にチームはオフに入ったが、竹下はその時間を有効に使った。「速いボールを投げるには」と動画サイトでカブス藤川、オリックス平野佳のフォームを繰り返し再生し参考にした。踏み出した前足を突っ張り体ごと前に出るようにすると、球速だけでなくボールの質、制球ともアップした。

 迎えた本大会は2試合とも2番手で登板し、自己最速タイの148キロを計測。敗れたが、3回戦では前年優勝のJX-ENEOS相手に2回を完全に抑えた。「社会人になって一番いい投球ができた」。好結果を残し、スカウトを色めき立たせた。当初あった先発へのこだわりもない。「厳しい場面で投げるけどブルペンが合ってる」。精神面でもたくましくなった竹下が、運命の日を迎えた。【加納慎也】

 ◆竹下真吾(たけした・しんご)1990年(平2)10月20日、北九州市生まれ。小学時代はソフトボール。中学は北九州中央リトルシニアで外野手。八幡高の1年秋から投手に専念。九州共立大では4年の8月に自己最速148キロを計測し13年からヤマハ。同年にヤクルトに入団した石山の背番号21を継承した。左投げ左打ち。180センチ、82キロ。