<プロ野球ドラフト会議>◇23日

 阪神が社会人の即戦力左腕を1位指名した。2度の抽選を外し、最速147キロ左腕の新日鉄住金鹿島・横山雄哉投手(20=山形中央)を指名した。山形中央3年時にプロ志望届を提出するも、指名漏れを経験。社会人の舞台で直球に磨きをかけようやく、プロ入りの権利を手にした。自慢の直球で、巨人阿部斬りを宣言。阪神は5人を指名した。

 テレビから流れた自分の名前に、横山の表情が緩んだ。隣でともに中継を見ていた同じく阪神2位の石崎、本田智久監督(46)から肩をたたかれ、さらに笑みが止まらなかった。

 約30分後に始まった記者会見の場に表れた横山は額から流れる大量の汗を拭った。対戦してみたい選手の名前を聞かれ、堂々と言い切った。「同じリーグで代表する巨人の阿部選手です」。宿敵斬りに名乗りを上げた。

 183センチ、85キロの大型左腕は最速147キロの直球を軸に勝負する。阿部との対戦を思い描き「直球でどれだけ勝負できるか。変化球ではなく、直球だけで勝負します!」と宣言した。「プロで戦っていけるように鍛えていきたい。ストレートだけで戦っていけるように」と力強かった。

 12年に新日鉄住金鹿島に入社。当時はまだ直球の最速も140キロ程度だった。以来ウエートトレーニングの数を増やした。体重は入社時の75キロから10キロ増。今春にようやく147キロが出るようになった。今年の都市対抗野球大会では全足利クラブの補強選手として出場。5者連続三振を奪う活躍を見せた。それでも、挫折の連続だった。山形中央時代は、2年の春夏に甲子園出場したが、ともに初戦敗退。高校3年時にプロ志望届を提出したが、指名を受けることはかなわなかった。

 社会人に舞台を変えても苦難は続いた。「試合には出られない。出ても四死球で自滅」ばかりだった。1年目の冬から、特訓を開始した。外角、内角のストライクゾーンの両隅にひもを設置。ひもの下に10球ずつ入れるまで練習は続いた。時には300球を要した。課題であった制球難を克服するため、ひたすら腕を振った。

 能見、岩田の実績組に加え、昨年のドラフト1位岩貞、岩崎に続き、また今年も即戦力左腕がタテジマに加わる。阪神和田監督も「ローテを取って欲しい」と期待をかける。横山は「もちろん期待に応えれるように頑張っていきたい」と力強かった。指名漏れを味わって3年目。「1度失敗したことなので、余計にうれしい」。ようやく念願だったステージの挑戦権を手に入れた。【栗田尚樹】<横山雄哉(よこやま・ゆうや)アラカルト>

 ◆生まれ

 1994年(平6)2月21日、山形県中山町出身。

 ◆球歴

 長崎小2年で野球を始め、中山中では「中山ベースボールクラブ」に所属。山形中央では高校2年時の春夏に甲子園出場し、いずれも初戦敗退。

 ◆球速

 最速147キロ。切れ味鋭いスライダーが武器。

 ◆趣味

 ゴルフ。

 ◆好きなタレント

 武井咲。

 ◆似ている芸能人

 「EXILE(エグザイル)のTAKAHIROに似ていると言われたことがあります」。

 ◆好きな食べ物

 出身地の中山町は山形名物「芋煮」発祥の地で、「芋煮です」。

 ◆ニックネーム

 スキンケア。

 ◆サイズ

 183センチ、85キロ。左投げ左打ち。足のサイズ28センチ。