<WBC壮行試合:日本3-2オーストラリア>◇23日◇京セラドーム大阪

 守護神はサブマリン!

 WBC日本代表の牧田和久投手(28)が、一発回答で守護神の座を確定させた。逆転した直後の9回に登板。圧巻の3者連続三振で1点リードを守り、侍ジャパンでの初セーブを挙げた。アンダースローからの浮き上がるボールと超高速クイックでオーストラリアの大男を翻弄(ほんろう)。山本監督ら首脳陣をうならせ、今村、森福、山口とともに挙がっていた候補者の中から一気に抜け出た。

 「牧田、いくぞ」。逆転3ランの直後、ブルペンで待機中だった牧田は、調整のピッチを上げた。2点ビハインドのままなら、今村の予定だった。「ピッチャー・牧田」のコールが、サブマリン守護神誕生の始まりだった。「今日はめちゃめちゃ緊張した。気持ちだけは込めていこうと思った」。強心臓が武器の男は、高まる緊張感の中でも、キッチリ試合を締めた。

 鮮やかな奪三振ショーだった。先頭のカンディラスは高めの直球で空振り三振。次打者のバタグリアも同じボールで空を切らせた。最後はフルカウントからの直球で三振。緩急を有効に使いながら、勝負球は持ち味の浮き上がる直球だった。「外国人選手は僕のようなアンダースローを見たことがないと思うので」。言葉はあっさりでも、大男を面食らわせた。

 首脳陣に守護神構想を確定させた。当初はこのオーストラリア2連戦で今村、森福、山口を含む4投手の中から、守護神を見極める方針だった。だが、内容、結果ともに一発合格といえる。牧田は抑えか?

 という問いに、東尾投手総合コーチは「できれば見せたくなかった。文句のつけようがないね」と絶賛。守護神の座を決定づけたことを認めた。

 プロ1年目の11年は22セーブを挙げ、守護神としての経験もある。球界でもレアなアンダースロー、超高速クイック、緩急、制球力に加え、強心臓も守護神の条件だろう。1死後、カウント1ボール2ストライクから超高速クイックも披露。ボールにはなったが、タイミングを外せる手応えは十分だった。山本監督は「短いイニングの牧田はタイミングが合いづらい」と評価した。「僕はどこでも投げるつもり。チームのために準備する。それだけです」。アンダースローが、侍ジャパンの大魔神として、君臨する。【久保賢吾】

 ◆ストッパー決定までの経緯

 今回のメンバーは「抑え専門」の投手が少なく、侍ジャパンにとって最大の懸案事項だった。最有力候補だった浅尾は右肩に不安を抱えたまま宮崎合宿に参加。最後まで回復のメドが立たず、28人の登録メンバーから落選。抑え経験のある山井も「滑るボール」の対応に苦しみ代表から外れた。山本監督は、リリーフ経験のある投手の中から、牧田、山口、今村、森福の4人を新守護神の候補として、WBC開幕までの強化試合で1人に絞り込む方針だった。牧田の完璧な投球で、難航するとみられていた守護神選びはわずか1試合で決着した。

 ◆変則投手と外国勢

 シンカー、スライダーなど多彩な変化球を武器にする下手投げの渡辺(ロッテ)は、新日鉄君津時代の00年シドニー五輪で日本代表入り。WBCでも過去2大会で代表に選ばれ、06年は強打の韓国相手に2度先発するなど計13回2/3で自責点3(防御率1・98)。09年は韓国戦2試合に投げ計2回を無失点で切り抜けた。

 94年には下手投げの足利(ダイエー)が、キューバとの親善試合で9回3安打、2失点で完投勝ちした。98年日米野球では横手投げの川尻(阪神)がソーサらの全米を8回1/3無失点の快投。アマ球界では、横手投げの秋吉(パナソニック)が昨年11月のアジア選手権で3勝を挙げ、最優秀投手賞を受賞した。