侍がタイブレークを制した。第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の2次ラウンド初戦、オランダ戦。延長11回、無死一、二塁で攻撃を始めると鈴木誠也外野手(22)の送りバントで二、三塁とし、中田翔内野手(27)の2点適時打で勝ち越した。中田は3回にもWBCで日本人初の3試合連続本塁打をマークするなど勝利に貢献した。日本は13日には試合がなく、14日にキューバ、15日にイスラエルと対戦。2次ラウンドの上位2チームが米ロサンゼルスで20日(日本時間21日)から行われる準決勝に進む。

 頼りになる。中田が、大熱戦にケリをつけた。今大会初のタイブレークが始まる直前、鈴木のひと言に心は燃えた。「『バントするんで、後は頼みました』と。先輩として意地でも打たないとダメだと思った」。延長11回無死一、二塁から始まった。9回から途中出場の後輩は約束通り、仕事を果たすと「一段と気合が入った」。1ボールからの2球目をとらえた。左前へ、執念で運んだ。決勝の2点適時打。一塁側ベンチは総立ちでガッツポーズ。場内もスタンディングオベーション。みなぎるアドレナリンを抑えきれず、ヒーローもほえまくった。

 中田で幕を開け、中田が幕を閉じた。2回先頭で三塁線を破る二塁打。チャンスメークをして、秋山の先制犠飛を呼び込んだ。追いつかれて迎えた3回2死一、二塁では「シーズンでは対戦打率が悪いので、ホームランだけを狙っていきました」。バンデンハークの134キロのスライダーを強振。高く舞い上がった打球は、左翼席最前列へ飛び込んだ。侍ジャパンでは史上初、WBCでは史上4人目の3戦連発となる勝ち越し3ラン。2回には先制点の起点となる二塁打。序盤の猛攻も中心にいた。

 小久保監督も認める、短期決戦の鬼だ。同監督は「集中力が高い。僕は短期決戦で全然打てなかったからね。その辺では彼の方が上」と評する。14年CSでは史上初の4戦連発を含む9試合5本塁打。15年プレミア12では8試合で3本塁打15打点。「あまり覚えていない」というほど、打席の中で試合に入り込む。1大会3本塁打は06年第1回大会の多村に並ぶ日本人最多タイ。集中しきった中田は、想像を超えたポテンシャルを発揮する。

 オランダの強力打線と真っ向勝負で張り合い、打ち勝った。試合終了時、時計は午後11時54分を指していた。4時間46分の死闘を制し、確信していた。「ここから侍ジャパン、ノっていくと思います」。ヒーローインタビューのお立ち台に立ったのは、日付の変わった午前0時2分。「時間も遅いので、みなさん、帰りは気をつけて帰って下さい」と、最後まで大声援を続けてくれたファンも気遣った。この日は、6打数3安打5打点。勝負強すぎる5番は、世界一奪還まで、覚醒し続ける。【木下大輔】

 ▼中田が5打点。WBCで日本代表の1試合5打点は西岡が06年1次リーグの中国戦、長野が13年2次ラウンドのオランダ戦でマークしたのに並ぶ最多。これで今大会通算8打点目となり、日本代表の1大会最多(9打点=06年多村)にあと1。