【グレンデール(米アリゾナ州)19日(日本時間20日)】これが日本野球の奥義だ。第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で米国との準決勝に臨む侍ジャパンがドジャースと練習試合を行った。試合はサヨナラ負けを喫したが、決戦前最後の実戦で隙を逃さない日本流の戦術を披露。危機管理に向けた用兵も試し、本番に備えた。試合後、大一番の舞台ロサンゼルスに乗り込んだ。

 電光石火の攻め手だった。同点の6回、先頭の筒香が初球打ちの二塁打で出塁。代走平田は次打者中田の初球で三盗を成功させ、続く2球目を捉えた中前打でホームを駆け抜けた。足を絡ませ、わずか3球で1点を奪った攻撃に小久保監督は「(平田には)代走でいく、と伝えていた。ああいう意識の高いプレーは助かりますね」とうなずいた。

 序盤は0-0の投手戦。先制を許しても最少失点差で食らい付き、好機を逃さずに得点を奪い取る-。まさに準決勝・米国戦を想定したかのような試合展開。入念な準備に裏打ちされた積極的な足技は、相手投手のいら立ちも誘っていた。平田は「ベンチからタイミングを計っていた。走者が出た後の初球が、一番(走る)チャンスがあった。あれで(中田)翔も打席に立ちやすくなったと思う。準決勝も、ああいう形での出場もある。ベンチから観察して隙を突けるようにしたい」と力を込めた。

 1点を争う中盤。本番では送りバントが定石の場面だが、ここぞの勝負手を試せた。長打連発は考えにくい一戦でいかに1点をもぎ取り、積み重ねていくか。拮抗(きっこう)した局面を打開する隙を突く走塁。1点を先制された直後の5回には、四球で出た鈴木の二盗から無安打で得点を奪った。侍の奥義といえる戦術は、ベンチ全体にしっかり浸透している。

 危機管理の用兵も行った。7回の守備からDHを解除。2番に投手平野を入れ、捕手炭谷を一塁へ回した。指揮官は「内川の体調面もあり、どうにかやりくりした」と説明。気温36度の猛暑での試合。選手のコンディションを考慮した側面もあったが、万が一への備えも整えた。

 本番前、最後の実戦で示した難敵攻略への突破口。試合後、チームは大一番の舞台、ロサンゼルスに空路で移動した。いざ勝負へ。奥義を携え、侍たちの準備は整った。【佐竹実】