国内で世界戦がなかった6月。元東洋太平洋バンタム級王者の岩佐亮佑(25=セレス)が、英国でIBF世界同級暫定王座決定戦に臨んだ。結果は地元の大声援を受けたハスキンスに6回TKO負け。初の世界挑戦は悔しいものとなった。

 ハスキンスは長く世界ランク入りする実力者も、戦前の予想では、現地のメディアも含め「岩佐有利」の見方が強かった。試合後、師匠の小林昭司会長は「1回から、距離が近かった。相手が強かったというより、岩佐のボクシングができなかった」と悔しさをにじませた。

 15歳の時、「10年後の自分へ」と題された作文に、ボクシングを始めたばかりの岩佐は「世界王者になる」と書いた。偶然にも25歳で迎えた舞台。思いが空回りしたのか、本来の力を出すことは出来なかった。それでも、まだ25歳。心は折れていない。帰国後、現役続行を宣言。自身のブログに思いをつづった。

 「思ってた以上に自分が小心者でした。アウェイだからポイントとらなきゃ、倒さなければという気持ちが先走ってしまい、自分のボクシングを見失ったのが敗因だと思います。(中略)僕はまだ諦めたくありません。ボクシングを始めてからの夢である世界チャンピオン! まだ時間がかかるかと思いますが必ず獲ってみせます」

 渡英前に、千葉・柏のジムを取材で訪れた時、練習を終えた岩佐がしみじみと言った。「こんな小さいジムからでも世界王者が出るんだということを、一緒に練習している子どもたちに見せてあげたいんです」。11年に現WBC世界バンタム級王者山中慎介との日本王座戦でプロ初黒星。回り道をしながらも、チャンスを待ち、実績を積み重ねながら強くなった。4年ぶりに喫した2度目の敗戦。岩佐の再起に注目したい。【奥山将志】