大相撲で大関経験者の前頭朝乃山(30=高砂)が、“2人の父”に今後の飛躍を誓ったことを明かした。20日、横浜市の横浜アリーナで行われた春巡業に参加。朝稽古では、今月11日に行われた静岡・御殿場市での巡業以来、9日ぶりに相撲を取り、計10番で7勝3敗だった。稽古後は報道陣に対応。今月7日に、出身の富山市で行われた巡業に先立ち、実家と母校富山商高相撲部元監督の浦山英樹さんの実家を訪ねたという。夏場所(5月12日初日、東京・両国国技館)では、3年ぶりの三役復帰が確実で、2人の故人に「ここからが勝負。ケガなく、2桁勝利以上を目指して頑張ります」と、仏壇に手を合わせて誓ったと明かした。

21年8月に父靖さんを64歳で亡くし、17年1月には父のように慕っていた恩師を40歳で亡くした。実は朝乃山は、今回の巡業中に左肘を痛めており、大事を取って相撲を取る稽古を控えていた。ただ、富山市に帰省し“2人の父”に、来場所以降の飛躍を誓っていただけに、まずは患部の状態を把握する意味でも、この日から本格的な稽古再開となった。

しかもこの日は、十両力士中心の、早めの時間から土俵に立った。「0番よりは取れた方がよかったので」と、力士が多くなる、幕内土俵よりも、確実に番数を重ねやすい十両土俵に立った。十両土俵とはいえ、宇良、一山本ら、同様に番数を重ねたい狙いの幕内力士もいたため、内容としても充実。「久しぶりだったけど、痛みはそんなに気にならない。大丈夫かな」と、患部には大きなサポーターを施しているが、順調な回復ぶりを実感していた。

3月の春場所が西前頭筆頭で、対戦する相手は三役に復帰しても変わらず上位総当たりとなる。3月1日に誕生日を迎え、その春場所から30代に突入し「若い時みたいに、勢いだけではいかなくなった。上手の取り方にしても、横から取りにいけば相手にハズ押しされるリスクが高まるので、下から取りに行くとか。下から取りに行けば、まわしを取れなくても、おっつけにも替えられる。そういう技術的なところも修正しながら、やっていかないといけない」と、一段と頭を使った取り口が求められると、自己分析した。

3年ぶりに仲間入りが確実な現在の三役陣は「顔ぶれがガラッと変わった。あの時は僕も25、26歳。力だけでは勝てないと思っている」と、強敵ぞろいだと認識する。その中で、常々「元いた地位に戻りたい」と目標に掲げる大関復帰には、目安とされる「三役で3場所33勝」が求められる。“2人の父”に誓った2桁白星となれば、そのまま大関復帰に向けての起点となる。「巡業も残り少ない。左肘の状態を見ながら、両手を使えるようにしていきたい」。まわしを取って寄り立てる、盤石の強さを求めながら、稽古を重ねるつもりだ。