相撲ファンも注目する珍しこ名への改名には、れっきとした理由があった。

幕下の朝鬼神(あさきしん、28=高砂)は、しこ名の下の名前を本名の「克忠」から「閻魔(えんま)」に改名した。「鬼」に「閻魔」。迫力あるしこ名となった理由を、朝鬼神は「『閻魔』というのが病気やケガになりにくい名前だそうで、お世話になっている方がつけてくれました」と説明した。入門当時からケガや病気に悩まされたといい、昨年10月にはへんとう腺を手術。現在は大きなケガや病気もなく土俵に上がる。「ケガもないし、誰が聞いても自分らしい名前だと思う」とお気に入りだ。

「嶺刃常乃助(みねやいばじょうのすけ)」から「峰刃幾叉丸(みねやいばきしゃまる)」に改名したのは、三段目の峰刃(22=錣山)。実は3月の春場所では、本名のしこ名「伊藤周」から、「嶺刃」に改名して臨んだ。しかし、網膜剥離を患い、同場所を休場。師匠の錣山親方(元関脇寺尾)に相談し、字画診断を受けると「1文字1文字が『凶』だった」と改名を決断した。師匠のお気に入りの人気漫画「鬼滅の刃」から取った「刃」は残しつつ、字画のいいしこ名にした。

たかがしこ名、されどしこ名。しこ名に込めた思いを胸に力士らは土俵に上がっている。【佐々木隆史】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

塵手水(ちりちょうず)する峰刃(撮影・鈴木正人)
塵手水(ちりちょうず)する峰刃(撮影・鈴木正人)