仙台女子プロレスが明日11日、新宿FACE大会「あの日を忘れない」を行い、試合開始前に黙とうをささげる。同イベントの3年連続の開催を迎え、里村明衣子代表(37)は「東京のプロレスファンに震災のことを知ってほしい。宮城で追悼するより、もっと知ってもらえると思う」と意図を説明する。ホーム仙台開催を12日にずらしてまで東京で開催する意味は、ここにある。

 「3・11」で仙女は修羅場を経験していた。当時いた7人のレスラーのうち、3人は引退などで退団し、3人いたスタッフも退社。11年8月からは一選手だった里村が代表に就任し、団体の運営を取り仕切った。当時経営ノウハウのなかった里村が自転車操業の中で粘り強く団体を存続できたのには、理由があった。同年4月、被災直後でがれきが残る石巻の避難所を1人で訪れ衝撃を受けていた。

 里村 家を流された人たちが段ボールですみ分けられた避難所で、必死に笑顔で頑張っていた。家がある自分たちが、へこたれちゃいけない。このままじゃ、いけないと思った。

 再始動した同年11月の大会では試合中に右足腓骨(ひこつ)を骨折。「こんなので痛いと言ってられない」と周囲には黙ってその後の試合も出続けた。体を張ったからこそ、今の仙女がある。里村は胸を張る。「今は自立して、本当の意味で『女子プロレスはこれからだ』と思える形にできた。今の仙女の勢いをアピールしたい」。魂を背負った女たちの戦いに、熱がほとばしる。【高橋洋平】