尊敬する「ライオン」を狩る-。ボクシングのロンドン五輪金メダリストでWBA世界ミドル級2位村田諒太(31=帝拳)が世界初挑戦する同級王座決定戦は、20日に有明コロシアムで開催される。13日、対戦する元世界王者アッサン・エンダム(フランス)が来日会見で紳士的だったことを聞くと、「リスペクトできる相手と戦えることがうれしい」と歓迎。「リングの中ではライオンになる」と言う強豪を、敬意を持って倒す。

 村田はうれしそうだった。「いい人のオーラ出てますもんね。リングでは闘志ギラギラでネバーギブアップ。そういった意味で尊敬しています」。都内のジムで3時間の練習を終えて、汗を拭きながら言った。

 その約4時間前、「いい人」エンダムは来日した。紺のスーツ姿で、羽田空港での会見では落ち着いた口調。試合のたけだけしさとのギャップを問われると、「2つの人格があります。普段は穏やかですが、リングの上ではどう猛なライオンになります」とほほえんだ。村田の写真を手に、リクエストに応えて威嚇したが、丁寧にお礼をして去る姿は紳士。「100%勝つ自信がある」と話す姿に元王者の風格が漂った。

 その言動が予想どおりの好漢だったからこそ、村田は意気に感じた。「リングでベストを尽くすのが楽しみ。良い試合になる」と胸躍らせた。この日は「目慣らし」で3回のスパーリングを終え、「今日は息子の誕生日なので」と笑顔で帰路に就いた。

 4度ダウンしながら判定まで持ち込んだ経験も持つエンダムは、「KO負けは1度もない。生まれながらのウォーリアー(戦士)なので、倒れるのは死ぬとき」とも語った。その決意も含め、相手に不足なし。「強い人に勝てば、自分を褒めたい」と村田。不屈のライオンを全力で仕留める。【阿部健吾】