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 GP:横浜大会>◇13日◇横浜アリーナ◇1万629人

 沢屋敷よ、ヘビー級日本一を名乗るにはまだ早い!

 武蔵(35=正道会館)が2回2分16秒、沢屋敷純一(23=チームドラゴン)を左ストレートでマットに葬った。左ハイキックと左アッパーでダウンを連取しての完勝。ひと回り年下の相手に力の差を見せつけた。

 「世代交代」という雑音を封じ込めるのに十分すぎる完勝劇だった。初回こそ相手の様子をうかがっていた武蔵だが、チャンスと見るや2回から一気に猛攻を仕掛けていく。1分9秒、独特の「エイヤッ!」という掛け声とともに左ハイキックでダウンを奪うと、1分47秒には左アッパーで相手を再びマットにはわせた。そして2分16秒、最後は渾身(こんしん)の左ストレート一撃だった。

 干支(えと)でひと回り下の沢屋敷との初対決に、周囲は「世代交代のかかる一戦」と騒ぎ立てた。12日の前日会見では、普段通り両手を差し出して握手した武蔵に対して沢屋敷は右手だけ。「何やねん」。10年以上も日本ヘビー級のトップを走り続けたプライドを傷つけられた。

 それでも試合前まで「特に何も」と黙して語らなかった。だが勝利のあとに率直に言った。「過去にも世代交代、引退と騒がれた。今回もその1つ」。続けて「そもそも根本的な部分で早いね。(戦うこと自体に)不満があった」と、谷川貞治イベントプロデューサー(EP=46)のマッチメークに対してチクリ。沢屋敷には「将来があるいい選手だね。経験を積ませて、大きく育って欲しい」と余裕のエールまで送った。

 06年は、4月から4連敗を喫するなど大不振に陥った。長きにわたって日本のトップに君臨したが、この時すでに34歳。周囲からは「引退」の声もささやかれた。だが「まだ後進に譲るわけにはいかなかった」。07年6月には米ロサンゼルスで武者修行を敢行。「それまで(の戦いでは)相手の距離だったが、自分の間合いに軌道修正した」。07年8月以降は4連勝と本来の強さを取り戻した。

 昨年の世界大会では8強入りできなかったため、現時点では世界トーナメントへの出場権はない。6月の日本GPでの優勝が条件となるが「考えていない。もう日本人はいいでしょ。この試合に勝てば(日本GPは)必要ない」。あくまで実績を評価されての主催者推薦枠で臨むつもりだ。追撃1番手の沢屋敷に完勝した今、武蔵の「ヘビー級日本一」の座は簡単に揺るぎそうにない。【山田大介】