<プロボクシング:WBA世界フライ級タイトルマッチ12回戦>◇30日◇東京・代々木第1体育館◇観衆8900人

 WBA同級王者の坂田健史(28=協栄)は同級3位の久高寛之(23=仲里ATSUMI)に判定勝ちし、4度目の防衛に成功した。

 坂田の強さだけが目立った。鮮血で赤く染めた顔で勝ち名乗りを聞いた王者は「効いたパンチはなかった。作戦通りの展開。自分のボクシングは進化している」と胸を張った。4試合ぶりのKOこそ逃したが、最大7点差の判定で若き挑戦者を難なく退けた。

 1回こそ久高の右カウンターを浴びたが、重戦車のごとくプレッシャーをかけ、得意の接近戦に持ち込んだ。3回には偶然のバッティングで右目上をカット。激しく出血した。「右半分は見えていなかった」というが、今回が世界戦8試合目という豊富な経験から冷静に対応。慌てず圧力をかけ、反撃の糸口をほとんど与えなかった。

 弱点を完全に克服した。昨年11月のデンカオセーン戦では1回、3月の山口戦では3回にダウンを喫した。防衛は重ねても、立ち上がりの悪さが課題として残った。今回は「最初から飛ばす」ことを意識して、元世界王者の名城らと計200回ものスパーリング。相手の右を食らうクセをなくすため、左のガードを上げることを意識づけた。

 同時に定評あるスタミナのさらなる強化を図り、驚異のタフネスに進化した。6月17日から恒例のハワイ合宿を敢行。1日のノルマとして午前中に16キロ、午後には8キロ走プラス60メートルダッシュ20本を課した。2週間で計222キロを走破。スパーリングの際にジム内の気温を35度以上に保つことで、体力アップを目指した。

 興毅戦を見据えた準備も始めている。5月下旬には、興毅と同じサウスポーの日本ミニマム級王者黒木健孝(ヤマグチ土浦)とスパーリングを行った。もちろんWBC王者の内藤も気になる。「内藤選手が注目されているが、フライ級には坂田っていうのがいるんだと知ってもらいたい。(次は内藤と興毅の)どちらでも準備はできてます」。熱望するビッグマッチに向けて、備えは怠らない。【大池和幸】