<ハッスルマニア2008>◇30日◇有明コロシアム◇8831人

 米国総合格闘技団体UFCと独占交渉契約を結んだ北京五輪柔道100キロ超級金メダリストの石井慧(22=国士舘大4年)が場外乱闘に参戦した。親交のある小路二等兵(34)の試合を観戦中、目の前に来た相手のKUSHIDA(25)に左手で逆水平チョップを見舞った。

 石井のハッスル“デビュー”は、試合開始から約7分後だった。リングサイドの鉄柵越しに観戦していた石井の前に、小路二等兵がKUSHIDAを羽交い締めにして連れて来た。何かが起こりそうな空気に、場内がざわつく。それまで石井は、小路二等兵の入場時に握手とハイタッチをした以外、腕組みをしながら腰をおろしてリングを凝視。観客からの「石井出ろ~」との声も、苦笑いでかわし続けていた。

 だが「石井、行けおら~!」との小路二等兵の声を聞き、ファイターの血が騒いだ。「一番、無難かなと思いまして」。おもむろに立ち上がると、鉄柵越しに左手で逆水平チョップを1発。食らったKUSHIDAだけでなく、小路二等兵さえも大きく体勢を崩す強烈な一撃だった。

 KUSHIDAの仲間から怒声を浴びても石井は素知らぬ顔で、にこにこしながら着席。助太刀むなしく小路二等兵組は敗れたが、8831人の観客は大喜びだった。石井は小路二等兵と高田総統にあいさつし「今日は石井慧でなく石井“三等兵”が来ました。高田総統にはアメリカでのエールをいただきました」と笑顔で引き揚げた。

 UFCの前に“高田モンスター軍”入り!?

 を果たした石井だが、本業の総合格闘技も“ハッスル”している。米ラスベガスでのUFC92大会視察から前日29日に帰国。翌日にもかかわらず、この日は観戦前に都内の吉田道場で、来月4日に試合を控える吉田秀彦(39)らと約2時間半のスパーリングを行った。「時差ぼけで眠れなくて」という状態で顔を腫らすほど打撃を受けたが、満足げな表情で08年の練習を納めた。

 勝負の09年は山ごもりしながら迎える。「期間を決めたら焦って、心のこもったお参りができなくなる」と、下山日などは決めていない。五輪での金メダル獲得から総合格闘技転向と、石井フィーバーを起こした今年。「そうだとしても日本ででしょ?

 僕は世界を見ているので」。人々を熱狂させる石井から、来年も目が離せない。【浜本卓也】