WBC世界フライ級王者の内藤大助(34)が、「北島流」強行日程で中国でのV5戦に臨む。都内で23日、上海で5月26日に熊朝忠(26=中国)と5度目の防衛戦を行うと発表した。環境の異なるアウェー戦になるが、上海市内の公害対策などのため、試合2日前まで現地に入らず、直前まで東京で調整する予定。昨年の北京五輪でレース3日前に現地入りした競泳の北島康介らが取った作戦で、ベルトを守る。

 デメリットを極限まで排した「弾丸遠征」で、内藤が未体験の中国防衛戦を乗り切る。上海入りは決戦2日前の5月24日に設定した。現地での行事を25日の前日計量と、26日の防衛戦の必要最小限にとどめた。それまでは、ギリギリまで日本国内で調整する。

 著しい経済成長の弊害か、上海も北京と同じようにスモッグ被害が報告されている。しかも5月の中国は黄砂のシーズンまっただ中。さらに上海は東京と比べて3~4度ほど気温が低い。計量前の数日間で一気に体重を落とす内藤が風邪をこじらせる可能性もある。現地入りを直前まで我慢することで、影響を最小限に食い止めるつもりだ。

 北京五輪で競泳男子平泳ぎ2冠を達成した北島らが取った作戦だ。北島が北京入りしたのは、最初の100メートル予選が行われるわずか3日前。直前まで韓国・済州島で調整した。アウェーの試合では、早めに現地入りして体を環境に慣らすやり方もある。しかし、同じ中国ということもあり、内藤陣営は強行日程を承知で北島流を踏襲する。

 2日間とはいえ上海でも万全の環境を整える。水や食料などは日本から持参する。内藤は02年にバンコクで当時の王者ポンサクレック(タイ)のWBC王座に挑んだ。その際に現地の食事が合わず、便秘気味になって減量に苦労したという。「食べ慣れているものがいいですから」。宿泊するホテルも会場の盧湾体育館まで徒歩10秒のところに確保。宮田博行会長は「後楽園ホールに行くより近い。移動疲れもありませんよ」と胸を張った。

 一方で相手の情報収集は最小限にとどめる。「ビデオは手に入れたけど、直前まで見ません。イメージが付いてしまうので」と内藤。頭に思い描くのは、相手よりもまず環境。24日には中国メディア向けの会見のため上海入りし、決戦の地のイメージを固める。【森本隆】