<プロボクシング:WBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦>◇8日◇大阪府立体育会館

 WBA世界スーパーフライ級王者の名城信男(28=六島)が3度目の防衛に失敗した。同級1位ウーゴ・カサレス(32=メキシコ)と7カ月ぶりのダイレクト再戦で、挑戦者の技巧に空転させられ、豪打は不発。終盤の追い上げも届かず0-3判定負けし、600日守った王座から陥落した。試合後は現役続行を表明し、カサレスとの再戦を含め、2度目の世界王座返り咲きを目指す。名城が敗れ、日本のジム所属の世界王者は4人になった。名城は13勝(8KO)2敗1分け、カサレスは31勝(22KO)6敗2分けとなった。

 名城は潔く負けを認めた。「採点は仕方ない。自分でも勝ちはないと思った。後半盛り返せなかったんで…」。赤く腫らした顔が痛々しい。ドロー防衛から7カ月ぶりの再戦は、悔しい結果に終わった。返り咲きから1年7カ月、ちょうど600日守ったベルトを失った。リングを降りる時、妻智子さん(28)の方にチラリと視線を投げた。4月29日が1回目の結婚記念日。愛妻に結婚後初勝利を届けることはできなかった。

 好調の立ち上がりから一転、中盤に失点を続けた。構えを左右に入れ替えるカサレスのジャブ、アッパーに邪魔され、得意の接近戦に持ち込めない。藤原トレーナーが7日に「秘策」と語っていた右ボディーストレートも効果的に入らなかった。手数で圧倒したが、空転させられた。「完ぺきにアウトボクシングでごまかされた」。ジャブを重視する傾向がある米国人ジャッジ2人の存在も、点差が開いた一因となった。

 4月30日には親交深い長谷川穂積がモンティエル(メキシコ)に敗れた。名城は同じ関西の世界王者でもあり、同門のメキシカンを倒すことで、長谷川の無念を少しでも晴らしたかった。3月31日のスパーリング後には「名城君は自由に戦った方がよさが出る」とアドバイスをもらっていた。挑戦者魂を思い出し、ひたむきに前進したが、カサレスの技巧に屈した。悪い流れは止められなかった。

 「再戦してくれるなら、メキシコでも行くよ」と枝川会長。名城は「どこでも行く。海外でやる夢を1度かなえてもらいたい」と呼応した。不屈の闘志は、衰えていない。国内タイ記録となる3度目の頂点を目指し、「サムライ」は戦い続ける。【大池和幸】