<K-1:WORLD

 MAX63キロ級日本トーナメント>◇25日◇東京・代々木第2体育館◇観衆3195人

 昨年準優勝の久保優太(23=DC

 LAB.GYM)が、初優勝を飾った。決勝で卜部功也(21=チームドラゴン)と対戦。序盤から相手の軸足にローキックを蹴り込み、3-0の判定勝利を収めた。負ければ現役引退の背水の陣で臨んだ大会を制し、今秋開催予定の世界トーナメント出場権も手にした。

 格闘家人生をかけた戦いだった。勝ち名乗りを受けた久保は、スタッフと抱き合いながら号泣した。昨年の決勝戦で大和にKOで敗れてから約1年。「悔しい思いをしながら練習してきました。夢のようです」と腰に巻かれたベルトを見つめた。

 約1週間前、フィジカル強化担当の古家政吉トレーナーから「負ければ引退させる。最低限の結果が優勝」と通告された。恵まれた体格とセンスを持ちながら、精神力の弱さが課題だった。日本王座を前に足踏みするようでは先がない、という判断だった。意を決した久保は試合前日、スポンサー各社にも、負ければ即引退を報告。退路を断ってリングへ上がった。

 初戦から3試合すべて判定勝ちだった。才賀、野杁、そして卜部とすべて年下の勢いある若手をねじ伏せた。魔裟斗に憧れ、一撃必殺の戦いに固執しがちだったが、昨年の敗戦を機に連日、長距離を走り込んで下半身の基礎を作り直した。「決勝では足が上がらなかったけれど、負ければ引退だと自分に言い聞かせて戦った」。

 今秋開催予定の世界トーナメント出場権を手にした。「震災からの復興のように、K-1復興の役に立ちたい」という久保。新王者が、新たな夢への1歩を踏み出した。【山下健二郎】