<UFC“最強”への挑戦(7)>

 UFCで最多勝利数を誇る岡見勇信(30=和術慧舟会東京本部)は、絶望のふちから立ち上がった。昨年8月のミドル級王座挑戦に失敗して以来、半年ぶりの試合で、元ライトヘビー級のティム・ボウシュ(31=米国)と対戦。岡見は「UFCの厳しさは、自分もよく分かっている。ここからもう1度、はい上がりたい」と顔を上げた。自身約6年ぶりの日本での戦いを、再起への第1歩にする。

 日本人初のUFC王座獲得に王手をかけながら、王者アンデウソン・シウバ(ブラジル)を前に2回TKO負けで散った。直前まで強豪相手に3連勝して2ケタ10勝をマークし、やるべきことをやって手にした挑戦権。「こんなチャンスは2度と来ない。最初で最後の戦い」と覚悟を決めて臨んだが、王座奪取から6年のUFC史上最長タイトル保有記録を持ち、当時13連勝中だった“絶対王者”に通用しなかった。

 無気力な日々を送り、体重は一時、100キロを超えた。岡見は「気持ちを切り替えるのに時間がかかった。自分は何をすべきかをじっくり考える機会が必要だった」と振り返る。昨年12月初旬に米ポートランドへ渡り、UFC同級の盟友チェール・ソネンと練習を重ねた。自分より1年早くシウバに挑んで敗れ、それでも再挑戦の機会を得ようと必死な姿に「刺激を受けた。強くなって、あの敗戦を生かしたい」と感じた。

 滞在期間を延長し、自己最長9週間に及んだ米合宿で「打撃やグラウンドでの1つ1つの動きや、その組み合わせ方で新しい方向性が見えた」という岡見。身も心も生まれ変わった姿で、母国から最高峰を望む。【山下健二郎】(おわり)