WBC世界フライ級王者五十嵐俊幸(28=帝拳)が、ゲンのいい地でオリンピアン初の防衛を宣言した。11月3日のダブル世界戦を控えて、30日に都内のジムで練習を公開した。今回は東北復興支援イベントとして仙台開催となったが、秋田・西目高3年時の01年みやぎ国体では優勝している。7月に五輪代表から6人目の挑戦で3人目の世界王者となったが、過去2人はいずれも初防衛に失敗した。「歴史をつくりたい」と、五輪代表経験者として初の防衛を期した。

 五十嵐が自ら切り出した。「初防衛戦は緊張し、難しいが、歴史をつくりたい」。五輪代表からプロ転向は21人目も、世界王者となったのは3人だけ。五十嵐は20年ぶりだった。過去のロイヤル小林と平仲は強打で名を上げたが、初防衛戦でははね返された。今度は誰も果たしていない、新たな歴史を刻むつもりだ。

 ゲンの良さも後押しする。高3の01年にはみやぎ国体に出場。少年ライトフライ級で4試合を勝ち抜いて優勝し、インターハイに続く2つ目のタイトルとなった。「負け知らずですから。必ず東京にベルトを持って帰ってきます」と誓う。

 心強い応援団もやってくる。仙台で開催とあって、故郷の秋田では約200人の応援団が結成された。初挑戦は東京開催とあって約100人から倍増だ。「半分の人は初観戦だと思う。応援に応えないわけにはいかない」と力が入る。

 五輪イヤーの強さもある。高2の00年に初の全国大会のとやま国体で3位に入った。04年はアテネ五輪で唯一の日本代表、08年は日本フライ級暫定王座を獲得。そして、今年世界王者になり、ロンドン五輪では金メダル村田らが大きな励みに。4年周期の成長で、最後もきっちり締めたい。

 世界王者になり、大きな自信も力もついた。7月の初挑戦は本来のアウトボクシングから、接近戦で打ち合った。「打ち合えたことでスパーでも幅が広がった。積極的に攻めて、最終的にKOできれば」とまで言い切った。

 王座獲得時にはジムに最多4王者だったが、西岡、粟生が連敗し、メーンは山中が控える。「流れを変えます」。スパーは前日に108回で打ち上げ。公開練習では軽い調整にも、浜田代表は「自信満々。成長にはびっくり」と勝利を確信していた。【河合香】