全日本の曙(44)がプロレス界の「綱とり」に挑む。今日27日、東京・両国国技館で行われる3冠ヘビー級選手権で王者・諏訪魔(36)と激突。9月に行われた「王道トーナメント」で優勝し、思い出深い両国での3冠挑戦権をつかみ取った。世界タッグ王座獲得で「5冠」を達成し勢いに乗る王者を相手に、真っ向勝負でベルト奪取を誓う。

 準備は整った。曙は各地で行われた前哨戦で、王道トーナメントで初披露し、秋山準、潮崎豪といった強豪を葬り去った必殺のヨコヅナインパクト(ジャンピング脳天くい打ち)を封印。「受けたことがないことで、威力を想像する。その方が恐怖心がある」と不敵な笑みを浮かべた。

 逆に、王者から絞殺宣言を受けた裸絞めへの対策は十分。前哨戦初戦で失神寸前まで追い込まれるも、その威力を自身の体にたたき込み、回避へのヒントを探り続けた。「最後の方は、体が逃げ方を覚えてきた」と自信も深めた。

 相撲界に続き、手が届くところまで来たプロレス界の頂へのこだわりは強い。1月に当時の王者・船木誠勝に初挑戦も完敗。「緊張のままに終わった。何もさせてもらえなかった」と壁の高さを痛感した。

 プロレスデビューから約8年。9月1日付で自身初の所属契約を同団体と結び、気持ちが一変した。遠慮はなくなり、「負けられない」立場になったことで、勝負師魂に火が付いた。満を持しての2回目の挑戦は「今回逃したら、そうそう次が来るものではない」と不退転の覚悟で臨む。

 導かれる運命のように決戦の地は両国国技館。「曙が生まれた場所。相撲時代、何度も大勝負をしてきた。プレッシャーもあるが、何が何でも取りたいし、取らなければいけない」。横綱が「大一番」にすべてをかける。【奥山将志】