<プロボクシング:村田諒太プロ2戦目8回戦>◇6日◇東京・両国国技館

 金の拳が2連続TKO勝ち!!

 ロンドン五輪男子ミドル級金メダルの東洋太平洋、日本同級1位・村田諒太(27=三迫)がデイブ・ピーターソン(27=米国)と8回戦で激突。序盤は動きが鈍かったが、尻上がりに調子を上げ、最終8回に連打でスタンディングダウンを奪取。その後のラッシュで同回1分20秒、レフェリーストップによるTKO勝ち。来年の海外進出に向け、弾みをつける2連勝だ。

 最終8回が、村田の真骨頂だった。襲いかかるようにピーターソンに食らいついた。ロープ際に追い込み、左フックと右ストレートを顔にねじ込んだ。揺れる敵を逃さない。まずは連打でレフェリーがスタンディングダウンでカウント。試合再開後、戦意の残った敵に再びラッシュを仕掛け、そのままレフェリーストップ。鼻血を流し、うなだれる相手を横目に「不細工な試合で申し訳なかったです」と謝罪したが、倒しにいって倒した白星に、大きな歓声が送られた。

 中盤まで左ジャブが出なかった。ガードしたまま前に出る悪い形で「アマ時代なら負けていたであろうパターン」(村田)。4回、強烈な右フックを浴び「強い相手なら倒れていた」。アマ、プロを通じてダウンがないというピーターソンの柔らかい動きに、パンチの破壊力が伝わらない。ズルズルと判定になりそうな展開だったが、左ジャブを多用して自らの得意な距離をつかみ、練習を始めたばかりの左フックも出した。重心も低くしてバランスを修正し、最終回のTKO勝ちにつなげた。「やはりジャブだなと」。プロ2戦目だが、冷静なギアチェンジだった。

 「1戦目でいい形で勝って今回もプレッシャーはありました」と明かした。8月、東洋太平洋ミドル級王者・柴田明雄に2回TKO勝ちし、プロの潜在能力を証明した。その可能性を世間に知らしめた。しかし10月下旬から米ラスベガスでスパーリングを中心とした練習に集中した際、1人の時間がプレッシャーを増幅させた。「いろいろ考え過ぎる。不安だったり、良くないことを考えていた」。

 モヤモヤは、ラスベガスの大自然で振り払った。宿舎から車で15分程度の場所にあるレッドロック・キャニオン国立保護区。標高1200メートルの高地で約6キロの坂道を走った。頂上で大きく深呼吸し「大自然で走っていると自分の存在の小ささを感じた。雄大な山の頂上にいれば自分は小さな存在。何かのオーラをもらった」。週3回の坂道走は高地トレだけでなく、精神的な重圧も和らげてくれた。

 村田をプロモートする帝拳ジムの本田会長は「8回まで戦い、2、3試合分のキャリアを積んだ。8回で仕留め、100点満点」と高く評価した。3戦目は来年2月22日、マカオ。「リング・オブ・ゴールド」と題し、五輪連覇の鄒市明(中国)、ロンドン五輪金メダルのイーゴリ・メホンツェフ(ロシア)と同時出場する豪華な舞台。「いい結果を出さないとボクが勝ってきた相手に失礼ですから」。連勝で年内を締めくくり、14年、新たなステージに突き進む。【藤中栄二】

 ◆村田諒太(むらた・りょうた)1986年(昭61)1月12日、奈良市生まれ。伏見中1年でボクシングを始める。南京都高で高校5冠。東洋大では04年の全日本選手権ミドル級で初優勝。08年に1度は引退するが09年春に復帰。全日本選手権などを含め、国内13冠。11年の世界選手権で銀メダル、12年ロンドン五輪で日本人48年ぶりの金メダル獲得。今年1月にプロ転向を決断し、同4月にA級のプロテスト合格。家族は佳子夫人と長男晴道くん。身長182センチの右ボクサーファイター。