ボクシングの東洋太平洋フェザー級王者天笠尚(あまがさ・ひさし、29=山上)が今月31日に大阪ボディメーカーコロシアムで、中軽量級の世界的な大物のWBA、WBO世界スーパーバンタム級統一王者ギジェルモ・リゴンドー(34=キューバ)に挑戦することが1日、発表された。都内で会見した天笠は、00年シドニー、04年アテネ五輪を連覇した1階級下の最強王者を相手に、番狂わせを誓った。

 玉砕覚悟の大勝負だ。「弱いお前を倒しに日本に行ってやる-」。リゴンドーからのビデオメッセージを確認すると、天笠はにやりと笑った。「99%勝てないと思っているが、油断してくれれば1%がチャンスになる。そこにすべてをかけたいと思う。一発かまします」と力強く言い切った。

 挑戦の話が浮上したのは11月中旬。王者はキューバ代表として五輪で2大会連続金メダルを獲得。本場米国のメーンで元世界5階級制覇ノニト・ドネア(フィリピン)に勝利した世界的なビッグネームだ。打診を受けた天笠は「自分がやっていいのかと、3日間は悩んだ」。だが、千載一遇のチャンスに「向こうが戦う相手がいなくて回ってきた話だと思うが、それも自分の運。挑戦心を持つのがボクサー本来の姿だと思った」と迷いを吹っ切った。

 アマ経験はない。高校2年で入門したジムで力を付け、日本王座、東洋王座と実績を積み上げた。当日は井岡、高山ら元世界王者を抑え、堂々のメーンを務める。10月の前戦は、敗戦濃厚の最終12回に、左フック一発から逆転のKO勝利。「自分には運がある」。たたき上げの29歳が、大みそかの夜に奇跡を誓う。【奥山将志】