平幕の魁聖(28=友綱)が貴ノ岩を退け10勝目。白鵬と並んでトップを守った。

 止まらない。前まわしを奪われても、魁聖は苦にせず前に出た。力強く、貴ノ岩を押し出し。1敗を守り、13年名古屋場所以来11場所ぶりに勝ち星を2ケタに乗せて「うれしいっす。うれしいけど疲れちゃう」と独特の言い回しで喜んだ。

 ラテン系の陽気さと、後ろ向きな思考を併せ持つ、ブラジル出身の日本人。前日に臥牙丸が初金星を挙げて神さまに感謝する姿を見て「うらやましい。ガガ関に神さまの連絡先を教えてもらおっと」と笑う。でも、金星にはこだわりがない。「上位と当たりたくないっす。みんな強いもん」。

 だが、その快進撃で、井筒審判部副部長には13日目に大関戦を組む可能性を示唆された。「上位戦が始まる。もうヤダ。プレッシャー感じますよ。あ~ダメだ、もう」と心臓を押さえるしぐさ。どこまでが冗談で、どこから本気か分からない。それが魁聖の持ち味だ。

 白鵬が初日で敗れたのは12年夏場所以来。当時優勝をさらったのは、モンゴルから日本国籍を取得していた兄弟子の旭天鵬だった。どこか似ている。11日目を終えて平幕が首位を並走するのは10年九州場所の豊ノ島以来。「相撲が終わった後はもう何も考えない。国技館を出たら『相撲って何?』って」。心が読みにくい。だから存在が、怖い。【今村健人】