大相撲秋場所での幕下転落が確実で、引退が決定的な十両若の里(39=田子ノ浦)が19日、八戸市で故郷青森県での夏巡業に臨んだ。

 2日前の17日午後11時23分に、父古川善造(こがわ・ぜんぞう)さんが心筋梗塞のために青森県鰺ケ沢町の病院で亡くなっていたことが明らかになった。72歳だった。突然の訃報。だが、引退表明を先延ばししてきたのは、地元での巡業のためでもあった。前日の移動中、弘前市の実家に立ち寄って悲しみの対面を果たしたが、悲しみを胸にしまって八戸市に向かった。「今日と明日は、オヤジのことよりも巡業優先です。それが終わってから、オヤジのところへ行って、息子としてしっかりやりたい」と気丈に話した。

 相撲が大好きだったという善造さん。15歳で角界に行きたいと言うと、賛成も反対もしなかったという。ただ「自分の人生は自分で決めろ」と。親元を離れて24年。最後に会ったのは昨年の夏だった。引退が決定的となった名古屋場所を終えて「オヤジも力が抜けちゃったのかな」と、寂しそうに笑った。

 2011年には先代師匠の鳴戸親方(元横綱隆の里)も亡くした。「2人のオヤジが旅立ってしまった。残念でしょうがない。2人とも『あとはしっかりやれよ』と言っているんじゃないですかね」。親族の配慮で、通夜と葬儀・告別式は青森での巡業後に営まれる。20日の七戸町の巡業では力士としておそらく“最後”の勇姿を、訪れたファンに届ける。そして、父の元へ駆け付ける。