北の湖理事長死去で衝撃が走った角界は、1月10日に新春の初場所を迎える。後任の八角理事長(元横綱北勝海)が就任して最初の場所であり、1年で最も華やかでにぎやかな場所。一方で水面下では静かに火花が散らされている。場所後に10人の理事改選があり、北の湖理事長に加えて65歳定年間近の3親方も退任するためだ。

 理事は六つある各一門で協議、調整し、所属親方数から票読みして立候補者を擁立する。名門出羽海一門は北の湖理事長ら最大3人を擁してきたが、今回は一新されることになる。その後継はいまだ不透明で、4人を擁立する可能性もあると言われる。

 八角理事長と同じ高砂一門では、14年には落選した九重親方(元横綱千代の富士)が復帰を目指しているという。前回2人が当選した伊勢ケ浜一門は1人が退任するが、今回も2人を目指していく意向だ。他の一門に協力を仰いだり、個別に票獲得に動いて当選を目指していく候補者もいる。

 理事選後の春場所を終えた3月末には、新理事長の選任も控えている。外部3人を含めた理事の互選だが、八角理事長が就任時は6対5の1票差で際どい当選となった。反対派は時期尚早との意見だったが、他にも意欲のある理事がいるようで、理事長選任への思惑も見え隠れしている。

 人気は回復したが、モンゴル出身力士が勢力を増すばかりで、危機感を持つ親方衆も多い。角界は大黒柱、大看板を失い、結束すべき時だが、内実では激しい争いが繰り広げられている。