大関照ノ富士(24=伊勢ケ浜)が、危機に見舞われた。6日目に、日本相撲協会へ「右鎖骨骨折」の診断書を提出。11年技量審査場所の初土俵以来、初めて休場することになった。4日目の平幕碧山戦で負傷。今場所の再出場はなく、初のかど番で迎える春場所(3月13日初日、エディオンアリーナ大阪)で全休か負け越しなら関脇に陥落する。

 昨年は右膝十字靱帯(じんたい)損傷、左膝半月板損傷-。それでも強行出場してきた照ノ富士に、さらなる試練が訪れた。4日目の碧山戦で2度、右肩で当たりを受け止め、勝利後に異変に気づいてアイシングした。帰宅前には「苦しいな…」と漏らし、翌5日目に敗戦後は苦痛で顔をゆがめ、珍しく取材拒否した。全治は不明だが、出場にこだわる大関の初めての休場は、大事をにおわせた。

 師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は今日16日にも入院することを明かし、手術については「やったとしても長くかかるものじゃない。場所が終わってからでも十分間に合う」と軽傷を強調。照ノ富士も周囲に「来場所は出る」と話しているという。だが最近では珍しい鎖骨骨折は、骨が接合するまで衝撃はご法度。力士ならなおさらだ。一般的に重傷で手術を要する場合は全治2~3カ月。かど番となる春場所も全休か負け越しなら関脇に陥落だ。

 部位は違うが、昨年夏場所前に鎖骨と近い肩鎖(けんさ)関節を剥離骨折した豪栄道は「(完治するまで)相撲は取れない。軽いものからやっていくしかない」と、調整の難しさを知る。強引な取り口も原因で、八角理事長(元横綱北勝海)は「ケガしたからこそ頭をつけていく相撲を。あの大きい体で柔らかくて、頭をつけたら勝てない。相撲が変わって出て来るのを期待したい」と話した。

 本来、大関陣でも実力は随一で、理事長も「(関脇陥落でも)2ケタ勝てると思う。万全なら優勝も狙える力がある」と太鼓判を押す。休場で膝の治療にも専念できる。大関復帰、横綱昇進のためにも、今は我慢の時だ。【桑原亮】

 ◆大関からの陥落と復帰 69年名古屋場所から改正されて、大関は2場所連続の負け越しで関脇に陥落し、翌場所で10勝以上挙げると復帰できる。それまでは3場所連続で負け越した場合が陥落だった。かど番とは、負け越せば大関から陥落する状況。将棋や囲碁の7番勝負で、負けが決まる1局を「かど番」と呼ぶことに由来する。照ノ富士は来場所がかど番となる。