「琴バウアー」で決着! 大相撲初場所で初優勝した大関琴奨菊(32=佐渡ケ嶽)が16日、都内の日本記者クラブで会見した。「菊バウアー」と二分されていた、上半身を反らすルーティンの呼び名について突然、外国人女性記者を指名して決めてもらった。春場所(3月13日初日、エディオンアリーナ大阪)で綱とりに挑むが、昇進すれば土俵入りは先代師匠の元横綱琴桜と同じ「不知火型」を選ぶことも明かした。

 「琴菊論争」に終止符を打ったのは、思わぬ一言だった。現役力士では曙、朝青龍、白鵬、魁皇に続いて5人目となった日本記者クラブでの会見。最後に両手を広げて上半身を反らす、土俵上でのお決まりのポーズを披露した琴奨菊は去り際に突然、1人の外国人女性記者に目を留めた。「『琴バウアー』か『菊バウアー』か、あの女性に聞いて決めてもらいましょう」。

 突然、がぶり寄られたのは海外通信社の外国人女性記者だった。思わず「コ…コトバウアー」と発した。わが意を得たのか、大関はにこりと笑い「先代親方がよく言っていましたが『琴』は『今に王になる』という字だと。『琴バウアー』でよろしくお願いします」。思わぬ決着だった。

 この論争、実は大関自らが発した言葉に始まった。

 11年名古屋場所から取り入れた、最後に塩をまくときのこのルーティン。フィギュアスケートの五輪金メダリスト荒川静香さんが上体を反らしながら見せた美しい「イナバウアー」に似ていることから、もじられた。ファンは当初「菊バウアー」と呼んでいた。

 ただ、優勝直後に大関自ら「琴バウアー」と言ったことで混在が始まった。「代名詞がつくことが光栄」とありがたがった大関も決着をつけて満足げだった。

 綱とりに挑む春場所。気が早く、横綱土俵入りの型の質問も出た。雲竜型の由来である第10代横綱雲龍は同じ福岡・柳川の出身で、先代師匠の琴桜は不知火型。「難しいところですが、私を見つけてくれた先代なのかな」。そして「なれるようにまず頑張ります」と付け加えた。本音を素直に答え続けた45分余り。笑いが多かった。【今村健人】

 ◆イナバウアー フィギュアスケートの技の1つ。本来は足を前後に広げ、つま先を外に向けて銀盤を横断する技。50年代に3度ドイツ王者に輝いたイナ・バウアーが初めて披露し、命名された。06年トリノ五輪で金メダルに輝いた荒川静香さんは、上体を大きく反らしながらイナバウアーで滑ったことで一躍話題に。同年のユーキャン新語・流行語大賞に輝き、上体を反らす形がイナバウアーと誤って解釈する人が増えた。