大相撲秋場所限りで引退した元幕内玉飛鳥の荒磯親方(33=片男波)が4日、18年半に及んだ相撲人生や引退した理由などについて語った。
-今の心境は
「今までは浴衣や着物を着ていたのに、ワイシャツにスーツになりました。まだ不思議というか、違和感がありますね。ネクタイとかしたことありませんでしたから」
-引退はいつ決断したのか
「幕下に落ちてから、考えていました。1年くらい前から意識し始めました。秋場所の直前には、この場所が最後だと思って臨みました。最後は絶対に勝ち越したいと思っていきました」
-最後の場所は、東幕下9枚目で4勝3敗。まだやれたのでは
「(7月の)名古屋場所で負け越しました。幕下で負け越したのは大きかった。今までは幕下に落ちても勝ち越してきたのに。内容も悪くなかったんです。前に出て、土俵際で逆転されることが何番かありました。攻めていたし、内容はいいのかもしれませんが、勝てないという結果が出た。勝ちきれないのが今の力なのかなと思いました」
-師匠の片男波親方(元関脇玉春日)は現役続行を望んでいたが
「親方には長く指導していただき、『まだできる』と言ってくれましたけど、自分の考えを尊重していただきました」
-悔いはないか
「悔いはないです」
-入幕は7度。十両昇進も7度、これは須磨ノ富士に次ぐ史上2番目の多さだった
「(この記録は)人によってとらえ方が違うと思います。自分としては、新十両の時はうれしかった。それと同じくらい、再十両もうれしかった。その分、うれしいことも多かったんです。もちろん、下に落ちる苦しさも経験しています。その分、上がった喜びも大きかったですね」
-落ちた時も頑張れた要因は
「やっぱり応援してくれる方々や、家族の存在が大きかったですね。家族、子供たちができて、そういう思いは強くなりました」
-思い出の一番は
「新十両の場所での千秋楽での一番です。勝って負けて勝って負けてのヌケヌケで、7勝7敗で迎えた千秋楽の千代天山戦。最後に勝てたのはうれしかったですね。当たってからいい相撲で押し出しで勝った。よく覚えています」
-千秋楽はすごい重圧だったのでは
「初めて15番とる場所で勝ち負けが続き、みんなに『ヌケヌケ』と言われて…。すごく思い出深いです。負けても印象に残ったかもしれませんね」
-最高位は西前頭9枚目だった
「もう1度、幕内で勝ち越したかった。新入幕以来、幕内で勝ち越していなかったので…」
-ファン対応はいつも丁寧だった
「お客さんがいてくれて、応援してくれる方がいるおかげで、自分たちはこういう場所に立てている。そういつも思っていました」
-負けた日も丁寧に対応できたのは
「師匠には、勝っても負けても引きずらないようにと言われていました。以前は負けると『クソッ』ってずっと思っていました。でも、そうではなく、勝負は勝負として、置いてこないとダメ。相撲が終わったら、その日のうちに気持ちを切り替えないと、自分自身も疲れてしまう。ムスッとして写真に写るより、ニコッした方がいいじゃないですか」
-千秋楽パーティーで、引退を発表した
「まず、師匠が『今場所限りで…』というあいさつをしてくださって、続いて自分が説明しました。泣きませんでしたよ」
-いつ泣いたのか
「13日目の相撲が終わってからですね。子供たちが見に来ていたんです。嫁が朝6時から並んで当日券を買って…。(幕下以下は)いつ相撲があるか分かりませんから、前もって買えないんです。相撲が終わって、階段を上がって、子供たちが走ってきた時ですね。子供たちに『今まで頑張ってくれてありがとう』と言われました。じーんときましたね。泣いてたかもしれません。その時は悲しいというより、すっきりした気持ちでした。最後に勝ったところを見せられてよかったです」
-今後の目標
「少しでも部屋のために、もっと勉強して。まだ何も分かりませんから。部屋の力になれるようにしたいです」
-断髪式の予定は
「未定です。国技館でやりたいと思っています」