大関照ノ富士(25=伊勢ケ浜)が、3連敗中と苦手にしていた東前頭5枚目の遠藤(26=追手風)を浴びせ倒して1敗を守った。昨年初場所途中休場の原因となった、左膝半月板の内視鏡手術から1年。自身4度目のかど番も9日目に脱出して復調ぶりを見せている。関脇高安、平幕栃煌山が敗れ、ともに2敗に後退。照ノ富士が15年夏場所以来2度目の優勝へ向けて全勝の横綱稀勢の里を追いかける。

 強い照ノ富士が戻ってきた。左を張って右のかち上げを遠藤に食らわせた立ち合い。左下手を狙ったがかわされて、もろ差しを許して土俵際に追い込まれた。万事休す、と思われたが右上手1本で一瞬つり上げて押し返し、右に回りながら自らの体と一緒に浴びせ倒した。「つかんでなかったら危なかった。(上手を)取れば持ち上げられると思った」と勝因を話した。

 弟弟子の照強を相手にしたこの日の朝稽古。いつもなら寄り切りや上手投げで汗を流すのがルーティンだが、左張り手からの右のかち上げを入念に繰り返していた。支度部屋では「流れですよ。流れ流れ」とけむに巻いたが、ここまで4戦1勝と苦手にしていた相手に対策は練っていた。

 どん底の1年だった。16年初場所を途中休場し、左膝半月板を手術。同年春場所から出場するも、思うように動けず最高でも8勝止まり。かど番も3度経験した。今場所も4度目のかど番だったが自己最速の9日目で脱出し、15年秋場所以来の2桁勝利。師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)は「前に出られている。前に出れば力がある」とケガからの復調気配にに目を細めた。

 実際は「我慢しながらやってる」と本調子ではない。だが「ケガしてから一番稽古ができた」と場所前の稽古量に手応えを感じていた。さらに新横綱稀勢の里の誕生に「俺も頑張ろうと思った」と刺激を受けた。15年夏場所以来、自身2度目の優勝へ、心も体も準備はできている。【佐々木隆史】