横綱日馬富士(33=伊勢ケ浜)が、過去8勝8敗と五分だった小結嘉風(35=尾車)を下して全勝を守った。初日から7連勝は14年春場所以来9度目で、そのうち6度は優勝につなげた経験がある。春場所後は右膝や左肘に痛みを抱えながら、巡業を皆勤。自腹で購入した電気治療機器を愛用しつつ、9度目へ前進した。横綱白鵬も平幕大栄翔を下し、全勝を守った。

 日馬富士は、身長で10センチ低い嘉風の胸に頭からぶつかった。常に主導権を握って圧倒した。押し出した後、両腕で相手を抱く余裕もあった。過去の対戦は五分だった難敵に「当たるのが楽しみだった。燃える相手の1人」と笑みをこぼした。

 体は万全ではない。支度部屋では左肘をさすりながら「しびれている」と漏らした。春巡業中から右膝や左肘など、全身に痛みを抱えていた。支えたのは、数百万円で自腹購入した伊藤超短波の電気治療機器による「ハイボルト療法」。日本電気治療協会の杉浦直行理事によると「従来の治療法が家庭用ホースの水だとすれば、このハイボルト療法は消防車のホース」と説明する。インナーマッスルの腫れ、炎症をなくす効果があるという。日馬富士も「これだと一瞬で良くなる」と効果を口にする。場所中も、夜に1日1時間半は使用してきた。

 八角理事長(元横綱北勝海)は「決して膝や肘が良くなってるわけではないはず」と見抜く。それでも、14年春場所以来の初日から7連勝。「勝つことが何よりの薬です」と言う日馬富士が、昨年名古屋場所以来9度目の優勝へ、ひた走っている。【佐々木隆史】