付け人の序二段力士に暴力を振るい、大相撲秋場所を謹慎休場した、西十両5枚目の貴ノ富士(22=千賀ノ浦)が25日、適切な措置を求めてスポーツ庁に上申書を提出した。暴力は8月31日に起きたもので「貴公俊」のしこ名だった、昨年3月の春場所中に次いで2度目。日本相撲協会のコンプライアンス委員会や師匠の千賀ノ浦親方(元小結隆三杉)から引退を勧告されているとし、24日には同協会に寛大な処分を求める要望書を提出していた。処分が決まる26日の理事会を前に慌ただしくなってきた。

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先代師匠の元貴乃花親方(元横綱)が協会退職を表明してから、この日がちょうど1年だった。今度は当時の弟子の貴ノ富士が、スポーツ庁に上申書を提出する、極めて珍しい行動に出た。上申書によると貴ノ富士は、付け人がしっかりとあいさつできなかったことなどを理由に、頭をげんこつでたたいたという。付け人への暴力は2度目。昨年10月に「暴力決別宣言」を発表して間もない協会からの厳罰は、避けられない情勢だった。処分を決める理事会を翌日に控え、監督官庁ではないが、弁護士を通じてスポーツ庁に訴えた。

上申書には「協会のコンプライアンス委員会及び現師匠の千賀ノ浦親方から、引退を勧告されている」と明記されている。その上で上申書では「適切な措置」を、24日に協会に提出したことが判明した要望書には「寛大な処分」を求めた。貴ノ富士の代理人弁護士は「処分を受けるのは覚悟しているが、少なくとも引退勧告や懲戒解雇は行き過ぎ」と述べた。厳しい処分が出た場合、27日にも弁護士同席で貴ノ富士に会見準備があることも判明した。

一方の協会担当者は、要望書が届いたことは認めたが「処分を決めるのは、あくまでも理事会。現時点で引退勧告していることはない」と、スポーツ庁への上申書の一部内容には否定した。協会の規定では、引退勧告を受け入れなかった場合、懲戒解雇となる。この日、貴ノ富士の行動が判明後に協会を訪れた千賀ノ浦親方は「今日は話せない。また明日」と、訪問理由を含めて何も話さなかった。

26日の理事会では、貴ノ富士が直接、処分を通達される見込みだ。処分を受け入れるか、突き返すか、それとも保留するのか-。処分を通達された場で、即座に回答を求められるかも未定。ただし、ある関係者は「貴ノ富士は(昨年春場所の)最初の暴行の際に『2度と暴力は振るわない』といった文書を一筆交わしている」と明かす。仮に法廷闘争となっても、処分を覆せるかどうかは、不透明な状態と言わざるを得ない。

○…貴ノ富士の弁護士から上申書を受け取ったスポーツ庁の担当者は「国がどうこうするものではない」と話し、静観する立場を示した。各スポーツ団体内における決定事項について、同庁が直接的に内容の変更を指示する権限はない。一方で、同庁が6月に策定したスポーツ団体ガバナンス(組織統治)コードでは選手、指導者間などで紛争が起きた場合、競技団体側が処分対象者に対し、スポーツ仲裁機構を利用できる旨を伝えるよう求めている。