青森県十和田市出身で東幕下49枚目の錦富士(23=伊勢ケ浜)が、西幕下22枚目の旭蒼天を送り出し、7戦全勝で幕下優勝を決めた。

関取昇進目前だった昨年秋場所に左肘筋断裂で途中休場して手術。リハビリなどの助言を受けてきた青森・深浦町出身で部屋付きの安治川親方(41=元関脇安美錦)への恩返しV。10月に予定されている同親方の引退相撲までに、関取に昇進することも誓った。福島市出身で東十両11枚目若元春(26)と西十両2枚目若隆景(25)は、師匠の荒汐親方(64=元小結大豊)が定年前最後の場所で、兄弟ダブル勝ち越しを届けた。

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錦富士が頭で鋭く当たると、左からのいなしで相手を土俵下に送り出した。「5番目を勝ったくらいから安治川親方にも『自信を持って優勝を狙って相撲をとっていい』と言われたので、1番1番を大事に狙っていました」と笑顔。東幕下3枚目だった昨年秋場所に左肘のケガを悪化させ、以降は治療とリハビリを重ねてきた。「これで最高位に近い位置まで行けると思うので頑張りたい」。ともに近大を中退して角界に入った同期の十両翠富士(23=伊勢ケ浜)の背中も追う。

昨年9月20日の手術後に寄り添ってくれたのが、現役時代に付け人を務めた安治川親方。両膝のケガで苦しんだ自身の経験をもとに、プールトレーニングや下半身強化法などの助言をくれた。「今場所は、験担ぎもしてくれたんです」。取り組み前日に必ず差し入れてくれている大阪が本店の「上等カレー」が必勝飯だ。「親方も『もう飽きたよ~』って言いながら一緒に食べてくれています」と感謝した。「今日は自分がカレーを作って、食べてもらいます」。カレー祝勝会をもてなすつもりだ。

10月4日には同親方の断髪式を含む引退相撲(両国国技館)が予定されている。「本当は現役中に(十両に)上がって恩返ししたかったけれど、そこには間に合わせたい。肘も順調に回復していますし、体を作りながら強くなりたい」。夏場所、名古屋場所も、華麗な素早い相撲を継続する。【鎌田直秀】