<AKB48大島優子卒業公演>◇9日◇東京・秋葉原AKB48劇場

 AKB48大島優子(25)が、アイドルを卒業した。東京・秋葉原のAKB48劇場で卒業公演を行った。キャプテンを務めたチームKメンバーのほか高橋みなみ(23)宮沢佐江(23)らゆかりのあるメンバー32人に送られ、ラストステージを終えた。卒業後歌手活動を行わないと明言しており、229人の小さな学舎で、最後の歌声を響かせた。

 感謝と絆と、そして雑草魂が、別れの言葉だった。「アキバ系アイドルとして始まった私たちが、昨日7万人でスタジアムを埋め尽くして…」と言うと涙がこぼれた。国民的グループになり4年がたっても、アイドル人生の半分はマイナー扱いされていたことを忘れていない。「とても狭く感じる劇場だけど、AKB大島優子が生まれた原点です。ここで踊れなくなることが一番寂しい。みんなの汗と涙、楽屋の汚さ、空気の悪さもあるけれど、ここから出発できて良かった」と、低い天井を見上げそっと胸に手を当てた。

 歌唱中は「みんなのことを考えると泣いちゃうから」と、努めて平静にいつもの全力パフォーマンスを貫いた。でも宮沢佐江ら仲間の送辞を受けると、涙の滴が落ちた。男っぽい性格の子役出身者は女性の集団が苦手だった。だから「最初はAKBが嫌いでした。仲間を信じてなかったのに、みんなのおかげで好きになっちゃった」とほほ笑んだ。

 最後は「ファンの皆さんがプレゼントしてくれた曲」と、代名詞の「ヘビーローテーション」でサヨナラした。前田敦子(22)は秋元康総合プロデューサー(56)が指名したセンターだった。「もう歌手はやらないから」。ファンがエースに押し上げた史上初めてのアイドルは、最後の恩返しを終えマイクを置いた。

 感情豊かで人間臭くて、ユーモアでチャーミング。オーラと泥臭さの両極を兼ね備えた、ここまで個性的なアイドルは過去いなかった。大島はエース、キャプテンの両方を経験。約300人のメンバーの先輩であり、2期生としては後輩でもあった。満足そうに「私は幸せです。今までの誰よりもAKB48を満喫し尽くせました」。ミスターならぬ「ミスAKB48」だった。

 「跡を継ぐって大変だし、後継者なんていらないです。みんなそれぞれのオリジナリティーで頑張ってほしい」。自分のように、努力とファンの応援で輝くようにと、願っている。

 優子の前に優子なく、優子の後に優子なし-。唯一無二の功績と存在感は、アイドル史の中では、永遠に色あせない。【瀬津真也】