<映画大賞:助演女優賞>

 助演女優賞を受賞した余貴美子(53)は、30本以上の映画に出演しているが、「ディア・ドクター」の撮影現場が最も思い出深いという。「茨城県での撮影でしたが、地元の方々がとても協力的だったんです。豪雨の中、朝まで撮影に付き合ってくださったり、炊き出しをしてくださったり。本当にありがたかったんです」。

 「ディア―」では、主人公がニセ医者と知りながらも黙って支える看護婦を演じた。どの役にも存在感を持って染まり切れる貴重なバイプレーヤーだ。「いつも作品での役割は何かを考えるだけ。わがままなんて言ったら、『やめておしまい』と言われそうで言えません」。女優歴は30年以上だが、手綱を緩めることはない。

 舞台女優としてデビュー。「ヘタ過ぎて劇団をクビになったんです」と笑いながらサラリと振り返る。「(『噛む女』の)神代監督に演技を教えていただきました。そういう意味では映画が基盤ですね」。

 丁寧にキャリアを積み重ねてきた末の今回の受賞。「思いがけないこと。すごくうれしい」と屈託のない笑顔で喜んだ。確かな演技力に加え、飾らない人柄と謙虚な姿勢。だから、ファンからも職人気質の映画スタッフからも愛され続ける。【近藤由美子】