来年9月の退団を発表し、16日に会見した月組の龍真咲は年明け、東京では“プレ・サヨナラ”となる「舞音-MANON-」で大恋愛ものに臨む。バレエ、オペラ作品でも人気のフランス恋愛文学最高峰のひとつ、「マノン・レスコー」をもとにしたミュージカル。本拠地上演前には舞台となるベトナムを旅するなど、トップ4年目の集大成に入る。今作の東京宝塚劇場は来年1月3日~同2月14日。

 龍は、来年9月4日に東京宝塚劇場で千秋楽を迎える「NOBUNAGA〈信長〉 -下天の夢-」「Forever LOVE!!」で退団することを決め、16日に会見した。

 退団理由には「結婚準備です」とジョークで返し、予定をつっこむと「先のことはまだ分からないじゃないですか」とけむに巻いた。

 12年4月のトップ就任から約4年半。東京では“プレ・サヨナラ公演”となる「舞音-」が同1月3日に幕を開ける。現役トップ最長コンビを組む愛希れいかと、久々の大恋愛物に臨む。「こんなに泣くのは初めて! ってくらい、マノンへの愛を貫きます。久しぶりに一目ぼれ。新鮮」。

 「マノン・レスコー」をもとに、物語の舞台はアジア。龍演じる仏軍エリート将校シャルルが、コーチシナ(現ベトナム南部)に赴任。奔放な少女マノンに魅せられ、恋に身をやつす。マノンの妖艶な魅力が、芝居の鍵のひとつ。龍が引っ張り、愛希がこたえる普段のコンビとは逆。退団カウントダウンが始まっても、新たな形も見せる。

 「もっともっと、愛希(マノン)に翻弄(ほんろう)されたい(笑い)。けいこ中に(役の衣装を意識して)変なガウンを着ていたから、ベトナムの旅のおみやげをガウンにしました」

 ベトナムへ2泊の旅をし、ゆかりの地を訪ねた。

 「(演出の植田)景子先生も行かれて、舞台で表現したいような風景が目の前に広がっていて、感動されたと聞いたので。植民地時代の建造物や、その時代の資料館に行きました」

 現地衣装、アオザイでけいこ着を作ってきた。

 「アジアンテイストなので、楽曲も懐かしいイメージ。舞台のセットに本物の竹を切ったものを使用します。初日から千秋楽まで、切った竹の味がどのように出てくるのか楽しみです」

 衣装は軍服、アオザイも着る。振り付けはシンプル。役者側の表現をのせる余白が多く、技量が試される。日本初演の前作「1789」での経験が生きる。

 「いい意味で、今までは『大劇場ってすごく広い』と思っていたけど、1789の途中から、面積的にはさほど広いと感じなくなった。こう思える自分がいたなら、次のステップは何だろうって考えた」

 今作のけいこ中から、退団は意識していた。将来的な女優転身には「機会があれば」と話したが、今はまだ「トップスター・龍真咲」に全力を注ぐ。

 組メンバーには、今作の宝塚大劇場公演千秋楽だった14日に退団を伝えた。「もっと、サラサラいくかと思ったら、ズーンとして…泣いていた子もいた」。東京で迎える新年公演へ、月組の結束力は高まった。

 次作のサヨナラ公演「NOBUNAGA-」「Forever-」で演じる織田信長は、かねて「演じたい役」にあげていた。トップ龍が率いる月組は一丸となって、龍・愛希コンビ集大成へと臨む。龍は「最後の1秒まで、龍のごとくしっかりと昇り詰めたい」と話し、さらなる高みを目指して昇る。【村上久美子】

 ◆ミュージカル「舞音-MANON-」~アベ・プレヴォ「マノン・レスコー」より~(脚本・演出=植田景子氏) フランス恋愛文学の最高峰のひとつ、バレエやオペラ作品でも高名な「マノン・レスコー」をもとに、将来を嘱望されるエリート青年将校が、駐屯先で出会った自由奔放に生きる美少女マノンに魅了され、翻弄される恋愛劇を描く。20世紀初頭のフランス領インドシナを舞台とし、作曲は米在住の韓国人作曲家ジョイ・ソン氏。エキゾチックアジア版「マノン」になる。

 ☆龍真咲(りゅう・まさき)12月18日、大阪府生まれ。01年「ベルサイユのばら2001」で初舞台。07年「パリの空よりも高く」で新人公演初主演。12年、月組トップ。昨年1月「風と共に去りぬ」でスカーレット役。同秋、涼風真世の代表作「PUCK」で妖精を好演。今春は仏発ミュージカルの日本初演「1789-バスティーユの恋人たち-」主演。身長171センチ。愛称「まさお」。