かつて大手電機メーカーの一角を占め、世界的に知名度が高かった三洋電機が、設立から60年余りで「消滅」しようとしている。親会社のパナソニックがリストラを加速しているためだ。

 パナソニックは2009年に三洋を子会社化。これまで携帯電話事業、半導体事業、洗濯機や冷蔵庫の事業を内外に売却した。今年8月には中国で洗濯機などを生産する合弁会社の全保有株を、米家電大手ワールプールに売却する契約を結び、中国での白物事業からの撤退を決めた。

 北米の薄型テレビなどのほかに直轄する主要事業がなくなり、国内では既に「SANYO」ブランドを冠する商品はない。2年連続の巨額赤字に沈んだパナソニックは、事業売却や、給与体系を一本化して三洋社員の配置転換を進めることも検討している。

 コメ粒からパンをつくるホームベーカリー「ゴパン」、携帯型カーナビ「ゴリラ」、充電池「エネループ」といった三洋のヒット商品は、すべてパナソニックブランドに切り替わった。

 パナソニックの子会社になる前、三洋の国内社員は約2万6000人いたが、13年4月現在の直轄部門は約2000人を残すのみとなった。

 パナソニックは自動車や住宅関連などの戦略事業に力を入れる方針で、三洋社員をさらに本体に取り込む見込み。「三洋の登記上の法人格がなくなるのも時間の問題だ」(関係者)との声も出ている。