Perfume(パフューム)が7日、メジャーデビュー10周年記念イベント「Perfume Annniversary 10days 2015 PPPPPPPPPP」の千秋楽を迎え、地元広島の広島グリーンアリーナで単独コンサートを行った。代表曲「チョコレイト・ディスコ」など、17曲を披露。ファンによるダンスコンテストやドキュメンタリー映画の上映会など、合計10日間で8万5000人を動員し、ビッグイベントを締めくくった。

 節目のステージに、3人は特別な演出を用意していた。曲目をその場でサイコロで決めるという、10周年のためにとっておいた構想2年のすごろく企画だった。運命のいたずらか、小学生時代に歌っていた「彼氏募集中」が大当たり。かしゆか(26)は「呪われてるのかな?」と苦笑いした。あ~ちゃん(26)も「昔の曲は恥ずかしいですが、26、27歳の脂の乗った女の子がやります!」と顔を赤らめた。中3で歌ったインディーズデビュー曲「スウィートドーナッツ」まで当たり、コテコテのアイドルソングでステージを盛り上げた。

 アンコール最後の曲は、3人の歴史を歌にした、28日発売の新曲「STAR TRAIN」。円形ステージの中央には、3人で向き合うようにスタンドマイクが置かれた。さらに、外周の網状の幕には、活動を振り返る映像が流れる。“泣かせる演出”にも、ステージの3人は三位一体の笑顔。まるで花びらのように輝いていた。

 泣き上戸のあ~ちゃん(26)も、必死に涙をこらえた。「歌っていて急に込み上げてきそうになったけど、こらえた。こらえられるようになったということは、大人になったよね。目の前で(振り付けのMIKIKO)先生やお母さんも見てくれている。ほんまに愛されてるなと思いながら、ライブをやらせていただけるのが幸せです」。

 見てもらえることの喜びを、実感していた。広島の地元レーベルで活動していた02年冬のある日、街一番の繁華街の大型ビジョンに自分たちの映像が流れると、3人は必死に通行客を呼び止めた。「あれ、私たちなんです! 今度イベントをやるので来て下さい」。力を合わせ、1000枚のビラを配った。来場したファンは、たった2人。自分たちより少なかった。「無力さを思い知った」(あ~ちゃん)。上京後も、胸を張って広島に帰れる成果を残せないまま、年月が流れた。ホームシックにかかり、東京への新幹線で涙したこともあった。

 それでもあ~ちゃんは「3人の前では、ネガティブなことは一切、口にしなかった」と振り返る。「売れたら、やりたいことがやれるかもしれん。アイドルって腹をくくって目標に向かって、何でもやるんですよ。やりたいことができる日を夢見て。全然かっこよくないと思っても、120%の笑顔で、やる気で、根性でやりきってきた」。ミカン箱を敷き詰めたステージや、ボウリング場の駐車場で歌ったこともあった。

 それが今では、世界ツアーを行うまでに成長。地元に9000人のファンを集めるほどになった。笑顔のファンを見つけると、のっち(27)は「皆さんには楽しむ才能があるなって感じました。その才能を使って、明日からは何でもない日を特別な日にしてください」と、粋な言葉で呼び掛けた。

 3人の胸の内には今、来年かなえたい大きな目標がある。「迷っていましたが、これからもPerfumeをやっていくと決めました。じゃけん、広島の人にはまだうちらのことを見といて欲しいんよね」。あ~ちゃんが広島弁で呼び掛けると、温かい拍手が起こった。「STAR TRAIN」の歌詞には、「今がスタートライン」の言葉が隠されている。10日間のイベントを完走した3人は、新たな夢への号砲を待っている。【森本隆】