岩井俊二監督(52)の小説「リップヴァンウィンクルの花嫁」刊行記念トークショーが4日、都内で行われた。小説は、黒木華(25)主演で映画化され、来年3月26日に公開されることが決まっている。この日は映画プロデューサーの川村元気氏(東宝)と語り合った。

 劇中に結婚のシーンが3回登場する。岩井監督は「男女の秘め事から1歩踏み込み、一緒にいたいと親に宣言し、認められ、みんなに祝福されて公式のものになる。自分の中で理解できない。1回、描いてみたかった」と、結婚に対する思いと、作品に取り入れた意図を語った。

 劇中に登場するSNSについて、川村氏から「(01年公開の)『リリイ・シュシュのすべて』のころは、SNSを否定的に(作品に)使っていたようですが」と聞かれた。岩井監督は「あのころは(インターネット上の)マナーも、あったものじゃない危険な場もあった。昔に比べると、マナーも確立し、良いか悪いか(の議論)はあるけれど、直接会って会話するより、SNSを使ったコミュニケーションの方が、人間にとって重要になることが起こり得るかも知れない」と答えた。さらに「SNS、バーチャル、リアルが同一化していく中で、どういう人と出会って人生を歩んだら、幸福になるかがテーマ。運命の出会いも、起こりやすいんだと思う」と力を込めて語った。

 小説と映画を起点に、岩井監督と川村氏が、現代の世の中について奔放に語るトークイベントとなった。小説「億男」など作家としての顔も持つ川村氏は「映画は大枠のストラクチャー(構造)を決めて作るけれど、小説の場合、書きながら本筋から脱線するのが面白い」と話し苦笑した。

 映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」は、黒木演じる派遣教員皆川七海が、ソーシャルネットワークサービス(SNS)で知り合った鉄也(地曵豪)と結婚も、浮気したと家を追い出され、綾野剛(33)が演じる何でも屋の安室から、月100万円稼ぐAV女優里中真白(Cocco)の屋敷の住み込みメイドなどのバイトを紹介される物語。小説は黒木をイメージして13年10月に執筆された。