グラミー賞で最優秀オペラ録音部門を受賞した指揮者の小澤征爾氏(80)が17日、京都市内で会見し、喜びとともに体力面の不安も口にした。18日から公演が行われるロームシアター京都に姿を現すと「びっくりしている。仲間と一緒にやったという気持ちが大きいので分かち合いたい。本当にうれしい」と笑顔を見せた。

 「僕にとっては因縁のあるオペラ」と明かした。受賞作品は、大病から本格復帰した公演で指揮したラヴェル作曲の歌劇「こどもと魔法」を収めたアルバム。10年に食道がんを手術し、復帰後も腰痛や肺炎などによる降板を繰り返し、体力回復のために1年間療養していた。

 不安を抱えながら13年8月、長野県松本市で開かれた音楽祭の「こども-」で復帰した。当時を振り返り「今でも(会見では)オタオタしていますが(復帰直後は)もっとオタオタしていた。いかにオーケストラ、歌い手が素晴らしかったかということです」と、多くの仲間に支えられた復帰だったと強調した。

 全身を使い指揮するのが小澤流。今でも病気をする前までの体力には戻っていないという。今後の挑戦について質問されると「大手術するまでは自分の体のことなんて考えたことがなかった。自分の体のことで迷惑をかけたので、そうならないようにやっていきたい」と答えた。旧満州奉天市(現中国瀋陽市)生まれの80歳。あえて「挑戦」は口にしなかった。【松浦隆司】