【米ニューヨーク20日=林尚之】宝塚歌劇団出身の女優によるミュージカル「シカゴ」が同市リンカーンセンター内デビッド・H・コーク劇場で幕を開けた。2500人収容の劇場は満員で、カーテンコールも米国人が7割を埋めた観客がスタンディングオベーションで歓迎。悪徳弁護士ビリー役の峰さを理(64)も感激の表情を見せた。ニューヨークで成長した宝塚OG版「シカゴ」は8月に東京と大阪に凱旋(がいせん)する。

 カーテンコールで総立ちとなった観客から「ブラボー!」の声が飛んだ。ミュージカルの本場ブロードウェー。目の肥えたニューヨークっ子に、宝塚が受け入れられた瞬間だった。

 2年前、宝塚の元トップスターが集結した世界初の女性版「シカゴ」が上演され、成功を収めた。その成果に注目したリンカーンセンター・フェスティバルの招きで今回の公演が実現した。「シカゴ」はブロードウェーで96年からロングラン中。同じ演目が同地で同時上演されるのは初めて。宝塚OG公演の海外進出も初。男役による「シカゴ」への反応が想像できず、不安も抱えての上陸だった。

 しかしヴェルマ役の和央ようか(48)が「震えるほど緊張したけれど、客席のすごい熱気を感じてのせていただき、力も入った。とても幸せでした」と振り返るほど反応は良かった。オープニングから大きな拍手が起こり、ウイットに富んだ演技やせりふ(字幕)に何度も笑い声が広がった。ロキシー役の朝海ひかる(44)は「アメリカンジョークがしっかりと伝わって笑ってくれてうれしかった。観客の温かさも感じました」と手応えを得た様子だった。

 カーテンコールでは元トップスター8人が勢ぞろいする20分の「タカラヅカ・アンコール」も上演。ラインダンスやエンビ服姿の男役のダンス、「すみれの花咲く頃」の合唱のほか、主要キャスト3人がトップスターを象徴する大きな羽を背に登場すると、どよめきが起こった。峰は「不安だったけれど、出た瞬間の歓声でOKと思った。ニューヨークの空気をいっぱい吸って、アメリカナイズされた『シカゴ』に期待してください」と8月の凱旋公演にも意欲を見せた。

 ▼「シカゴ」 1920年代のシカゴの刑務所が舞台。愛人を殺した人妻ロキシーと悪徳弁護士ビリーの力でマスコミ注目のスターとなったヴェルマが主人公。ブロードウェーで「オペラ座の怪人」に続きロングラン中。ビリーは峰、麻路さき(51)姿月あさと(46)、ヴェルマは和央、湖月わたる(45)水夏希(43)のトリプル、ロキシーは朝海、大和悠河(38)のダブルで演じる。ニューヨーク公演は24日まで。凱旋は8月10~21日が東京国際フォーラム、8月25~31日が大阪・梅田芸術劇場。