上方落語界の次世代エース候補の桂かい枝(47)桂春蝶(42)桂吉弥(45)が3月29日に大阪・ABCホールで「吉弥・春蝶・かい枝 くしかつの会」をスタートさせることになり10日、かい枝と春蝶が大阪市北区の上方落語協会会館で会見した。

 かい枝は故5代目桂文枝さんに、春蝶は父の故先代春蝶さんの師匠だった故3代目桂春団治さんに、吉弥は故桂米朝門下の故桂吉朝さんに、それぞれ94年に弟子入り。3人とも大師匠のもとで内弟子修業をしており、上方四天王のDNAを濃く受け継ぐ最若手世代になる。

 その世代から各門を代表して3人が選ばれ、94年入門にちなみ「くしかつの会」と命名された。

 かい枝は「三十石夢の通い路」を、吉弥は「百年目」と大師匠ゆかりの演目を演じ、東京へ拠点を移した春蝶はあえて江戸ネタの「芝浜」を演じる。いずれも40分以上の大ネタで、落語だけで2時間半以上の会になるという。

 江戸ネタを選んだ春蝶は「落語家として上方は江戸に負けてない。でも、情報発信力が全然違う。東京では上方の情報がボロボロ。たとえば、はめものを『ただのBGM』と紹介されたり」と言い、上方落語の情報発信力強化がねらい。江戸ファンに上方を知ってもらうことが、目的のひとつでもあると説明した。

 上方落語界では一昨年3月に米朝さんが、昨年1月に3代目春団治さんが亡くなり、戦後の上方を復興させた「四天王」全員が鬼籍に入った。そんな中で来春には桂春之輔が4代目春団治を襲名することが決まり、世代交代の変革期にある。

 かい枝、春蝶とも「(世代交代の)バトンは渡すものじゃなくて、奪うもの。僕たちはまだまだ地べたにいる」と言いつつも、春蝶は「15年後ぐらいにはある種のXデーがくるのかなとも思います」。月日の流れで自分たちの立場が変わっていくことも、頭の片隅にはある。

 かい枝は「上方には文枝、米朝、春団治、松鶴の金看板がある。あの時代は何が何でも、4人が金看板にならないといけない時代だった。将来、いずれはこの『くしかつの会』が金看板宣言の会になれば」と夢を語り、春蝶もうなずく。

 また、春蝶は「四天王の時代は『なんとか上方落語復興を』という強い“念”があった。だんだんその“念”が薄れてきた中で、僕らはバブルがはじけた世代。寄席も少なく、仕事もなく、客も3人とかの時代で、ちょっとは(四天王に)近い“念”を持ってきた。四天王の情熱、危機感を受け継いでいきたい」と話した。