タカラジェンヌを養成する宝塚音楽学校の103期生40人が2日、兵庫県宝塚市内の同校で卒業式に臨み、阪急阪神ホールディングス代表取締役社長で、音楽学校の角和夫理事長(67)が、京大教授でiPS細胞研究所の山中伸弥所長(54)を例に出し「誠実」「謙虚」「バランス感覚」の勧めを説いた。

 角理事長は、卒業生40人を前に「誠実、謙虚、バランス感覚。この3つを忘れず、夢へ歩んでください」と言葉を送り、その例として、12年にノーベル生理学・医学賞を受賞した山中教授をあげた。

 「この3つをまさしく体現したのが山中教授。受賞で研究費は増えたようですが、それでも研究所の費用は足りない。その研究費のために講演会、マラソン活動を欠かさず、続けられ、そこで得た費用を研究所に注いでおられる」

 角理事長は山中氏がその熱意ゆえ、2月19日の「京都マラソン」で、54歳ながら3時間27分45秒と自己ベストを更新できたといい、とりわけ「誠実」「謙虚」の心を訴えた。

 「重要な局面で、不利になってもうそをつかない誠実さはもちろん、人は権限が増えるほど謙虚でなければならない。皆さんもこれから、ファンの方を前にするでしょうが、ファンの方が増えれば増えるほど、謙虚であるべき。見た目の美しさ以上に、内面の美しさが大事です」

 山中教授については「ぜひこのすばらしい生きざまを知って、皆さんも励んでもらいたい」とした。

 角理事長の言葉を真剣なまなざしで聞き入った40人は、15年春に競争率約27倍の難関を突破して入学。2年間、演技やダンス、声楽など厳しいレッスンを受けてきた。成績順に並んだ40人は上位10人のうち、娘役が8人もおり、全教科に完全出席が必要な「特別皆勤賞」は、例年なら数人程度だが、今年は10人いた。

 毎年、成績上位4人が取材対応するが、今年は4人とも娘役。首席の芹沢佳夏(せりざわ・けいか)さんは「男役の生徒も含めて103期生は仲が良く、みんなで切磋琢磨(せっさたくま)して成長していきたい」と話した。

 また、成績3番目の龍田実可子(たつた・みかこ)さんは、167センチの長身ながら、娘役を目指す。「初めて宝塚を観劇したときから娘役さんにあこがれていました」。あこがれの先輩には「レジェンド」と呼ばれた元星組トップ柚希礼音と、その相手役を務めて6年超のトップ生活を伴走しきった夢咲ねねのコンビをあげ「目標にして励んでいきたい」と目を輝かせた。

 103期生はこの日午後からの劇団入団式を経て、4月21日に兵庫・宝塚大劇場で開幕する雪組公演「幕末太陽傳(でん)」「Dramatic “S”!」で、初舞台を踏む。