4月からは法大の特任教授という肩書になる。

 「44年間、教員やっていたんですけど、教壇に立って教えるという事から離れるのは初めて。一応、特任教授という肩書はあるんですけど、主に広報活動に参加して正規の授業は持たないの」

 日本の学力低下の危機が指摘されている。今年の1月に発表された「世界の大学ランキング」で東大は34位、京大が37位。長らくアジアで1位の座を保っていた東大の上にはシンガポール、中国の大学がランキングされている。学力=国力と考えれば、日本はアジアのトップから陥落している。

 「東大がアジアのトップっていうのは揺るがないと思ってたんですがね。2000年代の小泉(純一郎)さん、竹中(平蔵)さんの、聖域無き構造改革。構造改革は大事かもしれないですけど、教育のところは、ちょっと待ってと。株式会社が学校経営をしてもよくなっちゃったから、金もうけばかりやってるような学校ができる。テーマパークに行くバスの中で洋画を見てれば英語の単位、最寄り駅から学校まで歩けば体育の単位がもらえちゃうとかね。そんな無責任な学校も出来ちゃった。株式会社はやっぱり利益を出さなきゃいけないから、そこで矛盾が生まれてくるんです」

 来年には小中学校の道徳の授業が教科化される。

 「これはやめた方がいいですね。教科にしちゃうと、成績がつくわけですよ。評価される。で、頭のいい子は『こう答えれば先生は喜ぶな』とか『感想文はこう書くと高い評価がもらえる』っていうのが分かっちゃうんですよ。道徳の授業自体が悪いわけではないんです。だけど、教科にする事はないと思うの」

 さらに、2020年に向けて、入試制度の改革が進んでいる。

 「戦後70年の中で最大の改革。これに失敗すると日本は世界から完璧に落ちこぼれる。もう、これが最後のチャンス。たとえば、東大が今から4、5年前に、秋入学を取り入れようしたらつぶされたんです。国際的には秋入学が主流になっているから、秋入学にしないと海外から優秀な学者を呼ぶ事ができないんです。留学も、行きにくい。海外から優秀な留学生を呼ぶ事もできないわけです。半年ずれますから。だから東大がアジアのトップから陥落したっていうのは、ものすごく大きな意味を持ってる。東大の問題じゃなくて、日本の教育全体の問題なんです」