山田洋次監督(85)の新作「家族はつらいよ2」(5月27日公開)完成披露試写会が26日、東京・丸の内ピカデリーで行われた。山田監督は過酷な撮影を振り返るとともに、完成披露を迎えることが出来た喜びを感慨深げに語った。

 山田監督 去年(16年)8月の暑い盛りにクランクインしましてね、本当に大変な撮影でした。クランクアップまで、僕は本当に持つんだろうか…途中でダメになっちゃうんじゃないかと不安な気持ちになった。10月末にクランクアップして、ようやく完成披露の日を迎えた。全国のたくさんの人が見てくれればいいなと思っております。

 「家族はつらいよ2」は、16年3月に公開された「家族はつらいよ」の続編。前作は、山田監督の大ヒットシリーズ「男はつらいよ」以来20年ぶりの喜劇映画として製作された。12年公開の「東京家族」で一家を演じた8人が再集結し、両親の熟年離婚騒動に揺れる平田家の喜怒哀楽を人情たっぷりに描いた。

 今作では、熟年離婚を乗り越えた平田家の父周造の運転免許を返上させようとする子どもたちと、周造とのせめぎ合いを描いた。主演の橋爪功(75)は「パート2を作るって監督から話が来た時は、何て幸せなんだと思った。もしかしたら、パート3(の話)が出来ているのかも知れないけれど」と早くも第3弾に期待した。

 夏川結衣(48)は「自分の作品に2があるのは初めて。(撮影中は)楽しみあり、緊張あり、居心地の良さの中、汗をかく瞬間があり、いい経験、時間を過ごした。(試写を見て)笑ったし、身につまされ、考えさせられ、喜劇なのにセンスがいいなと思った」と撮影を振り返り、試写の感想を語った。

 作品は、高齢化社会がますます進む中、年金だけで生活が出来ず、後期高齢者になっても働かざるを得ない人が少なくない日本の現状を描いた。また核家族化が進む一方で、隣近所との縁が薄くなっていく無縁社会など、現代日本が抱える問題をテーマにしている。その一方で、せりふ回しや俳優陣のコミカルな動きが、それらのテーマを重くしすぎず笑いに変えている。

 山田監督は、舞台あいさつの最後に「見終わった後、暗い夜の道を駅に向かう時に、今日は楽しかったな、面白かったなという思いに包まれ、家族について考えてもらう映画になればいいと心から思っています」と語った。その言葉どおり、試写は最後まで笑いが絶えず、笑顔で劇場を出る観客を見送る、山田監督は、すがすがしい笑みを浮かべていた。【村上幸将】