大阪地検特捜部は4日、806曲の音楽著作権を譲渡すると偽り、兵庫県の投資家から5億円をだまし取ったとして、詐欺容疑で音楽プロデューサー小室哲哉容疑者(49)ら3人を逮捕、東京都港区の自宅や事務所など関係先を家宅捜索した。

 90年代に数々のヒット曲を生み出した小室容疑者は近年、事業の失敗や前妻への離婚慰謝料支払いで10数億円の借金を抱えていたという。

 小室容疑者は調べに「3人でやったことに間違いない。申し開きすることはない。反省し被害者に謝罪したい。刑事責任を潔く取るつもりだ」と供述しているという。

 ほかに逮捕されたのは、小室容疑者が役員を務めるプロダクション「トライバルキックス」(東京)の代表取締役平根昭彦(45)、監査役木村隆(56)の両容疑者。

 特捜部の調べによると、小室容疑者らは06年8月、これまでの作品806曲分の著作権について、既に音楽出版社に譲渡し、うち主要12曲はト社に譲渡するなどしていたのに、「過去の作品806曲がフルセットになっていることに意味があるし価値が出る」「全部僕に著作権があります」などとうそを言って、10億円で売却する契約を兵庫県芦屋市の投資家男性と締結。さらに前妻に差し押さえられていた印税収入の権利について、解除する意思がないのに、解除代金として計5億円を支払わせ、だまし取った疑い。

 5億円のうち1億5000万円は、小室容疑者の滞納家賃などを肩代わりした木村容疑者に、3億5000万円も融資金の返済に充当。

 小室容疑者は投資家との交渉過程で「これでも名の知れた男。逃げも隠れもしない」と説得し、自ら作った曲を「世界で1つの曲」とCDにしてプレゼントしたという。

 この5億円の支払いをめぐり、小室容疑者と投資家は民事訴訟で争ったが、08年7月、小室容疑者が6億円を支払うことで和解。しかし、解決金は期日までに支払われず、投資家が小室容疑者を大阪地検に告訴した。