【13年12月1日付の日刊スポーツから】<日曜日のヒーロー>

 放送中のNHK連続テレビ小説「ごちそうさん」で、ヒロイン杏(27)の夫を演じている東出昌大(25)の注目度が急上昇している。杏と同じくモデル出身。実は初対面は約7年前で、パリコレの会場付近でだった。ともに当時を覚えており、朝ドラで運命の再会。息もぴったりな夫婦役で、絶好調のドラマをけん引する2人の関係性、東出自身の現在、過去、未来を聞いた。

 えっ、そこまでやるの?

 今春、「ごちそうさん」の収録に入ると同時に驚かされたのが、大阪への転居、上方落語の定席小屋「天満天神繁昌亭」でのアルバイトだった。

 「(引っ)越さないとダメだって。そう、昨年末から(転居を)決めていて、4月に。大阪の言葉、文化、周りの音も全部、吸収しないと間に合わないって」

 モデル出身で抜群のスタイル、美形、きっちり目を見て質問に答える姿勢から、誠実さがにじみ出る。朝ドラの収録は半年以上続き、平日はほぼ拘束される。大阪でホテル暮らしの役者は多いが、東出は住まいを丸ごと移し、個人としても大阪男になりきる。

 「収録に入る前、4日ほど、繁昌亭でもぎり(チケット販売)をやらせてもらいました。あ、そのあと、向かいのカフェでもバイトさせてもらいました」

 落語家、ファンが多く利用するカフェで、大阪男の雰囲気を吸収。はんなりした上方典型の芸風だった故5代目桂文枝さんや、船場言葉を忠実に操る桂米朝らの落語も聴いた。

 「落語家さんでも『今の大阪弁と上方言葉は違うから難しい』っておっしゃってて、落語も聴いてみようと。もともと江戸落語も好きで、上方から来ているネタもあって、おもしろい。江戸だと古典という感じなんですけど、上方は(故桂)枝雀師匠、(桂)ざこば師匠とか、芸が大きくて、全然違う。おもしろくて、今も聞いています」

 秋口までは、オフに1人で淀川に夜釣りに出掛けることもあったという。

 「息抜きでした。75センチと、60センチのウナギが一晩で釣れたこともありました。かば焼きと、白焼きにして食べました。YouTubeでさばき方を勉強して、ソースの作り方も自分で調べて。いや、もともとの性格は人に頼ってばっかなんですけど、ウナギのさばき方なんて誰も教えてくれませんから(笑い)」

 父が日本食の調理師で、自身も中学時代からパスタなどを作った。

 「納豆としそがあれば、納豆パスタにしたり、かぼちゃの煮付け作ったり、(収録で)タイをもらって煮付けにしたり、鶏がら買ってきて水炊きにしたりとか、しますね。でも、前よりも、料理が楽しくなっています。多分、自分の時間を過ごしているって感覚があるんだと思います」

 今は息抜きに大阪市内を走ったりもするが、収録のない週末は市内のカフェでリラックスする。

 「台本開いたままボーッとして…。そういえば、こないだ、おばちゃんに『あんた、朝ドラの人に似てるな~。あんたも大きいね~。仕事は何してんの?』って言われて、『ありがとうございます。自営業です』って言いました」

 大阪のおばちゃんの“口撃”にも切り返すたくましさも身についてきた。