熱烈な阪神ファンとして知られた作家、故藤本義一さん(享年79)の三回忌「第2回蟻君忌(ありんこき)」が30日、大阪市内で行われ、妻統紀子さん(79)ら親族は、生前の義一さんの阪神への思い入れの強さを明らかにした。

 統紀子さん自身は阪神に興味はないというが「主人がいつも見ていたので、私も用事をしながら『あ、負けた』とか『勝ったのか』とか、日本シリーズも気にはしていました」。

 今シリーズで初戦に勝利した後、負けが込んだタイガースに「(義一さんは)アホか!

 と言ってると思います。親しみを込めた口調で、よくテレビに『アホか!』と言っていました」と、天国の義一さんの心情を代弁した。

 娘2人も父義一さんのタイガース愛を注ぎ込まれていたようで、次女芽子さんは「阪神はウルトラマンで、巨人は怪獣やって、誤った教育をされてきまして」と苦笑しながら、義一さん流の“教育”を告白した。

 芽子さんによると、生前の義一さんは、阪神戦のテレビ中継に見入り「なんで、こいつ出すんや!

 とか、いつもつっこみながら見ていて、たまに自分の予想通り(の采配)だと満足そうにうなずいていた」そうだ。

 そんな義一さんは、甲子園球場にも通い、妻統紀子さんの待つ自宅へ、みかんを手に帰宅したことがあった。「巨人ファンばかりの中で(球場観戦中に阪神が)負けてたから、巨人ファンがみかんあげるってくれたわ…」と照れ笑いしながら、統紀子さんに差し出したことがあったという。

 そんな熱い阪神への思いから、阪神ファンからも巨人ファンからも、多くの人々に愛された義一さん。前日夜、仏壇に手を合わせた芽子さんは「洋服ダンスを開けろと言われた気がして、開けたらこれがあった」と言い、阪神のジャンパーを広げてみせた。

 この日の三回忌会合には、そのジャンパーが置かれ、義一さんの“魂”も出席。藤本義一文学賞の創設が発表された。同賞は作家難波利三氏、落語家桂文枝らが審査員となり、来年4月から募集スタート。来年春に公開されるキーワードをもとにした短編小説を募集し、同10月30日に大賞などが発表される。