甲斐バンドが18日までに、10月スタートの「BEATNIK

 TOUR08-09

 THE

 ONE

 NIGHT

 STAND」を最後の全国ツアーとすることを決めた。現在、リーダー甲斐よしひろ(55)の元にはメンバーのドラム松藤英男(54)ギター田中一郎(53)とともに、長年甲斐バンドのコンサートに携わってきたスタッフが集結。スタッフも公演数も全盛期とほぼ同じで準備の大詰めを迎えている。

 楽器の置き方1つで激論する、プロ意識の高いスタッフに感激しながら、甲斐は決断した。「今回のような大規模なツアーをもう1回はできない。今回が最後のツアー。最後の甲斐バンドです」。

 「ロックはもうからない」とされた70~80年代。全国で激しいライブを繰り広げ、ファンを獲得。ロックとビジネスを結びつけた先駆けの、全国ツアーの終わりは「最後の甲斐バンド」を意味している。

 甲斐バンドは86年に解散。それぞれ独自の活動に入り、タイミングが合えば再集結してライブや創作活動を行ってきた。今回は解散ツアー以来22年ぶりに全国を回ることから、発表と同時に往年のファンから問い合わせが相次ぎ、公演数が増える可能性もある。複数の若手バンドが代表曲「HERO」をカバーし、幅広い世代から注目されるのも「最後」を迎えるタイミングだという。「時代が『最後の甲斐バンド』を求めているんです」。

 最後にふさわしく、ヒット曲、ライブの定番曲ばかり25曲に及ぶ予定。長期間のツアーは曲数を削るべきところを甲斐は「すべてを出し切る覚悟ができた。酒もポリフェノールたっぷりの赤ワインが増えた」と心身ともに整えている。最近はステージに上がっても、ドラム台から離れていた松藤が、22年前のツアーで使用したスティックを引っ張り出した。「もう売ってないやつなんだ」。職人たちがラストスパートに入る。