人気バンド「JAYWALK」のボーカル中村耕一容疑者(59)が9日、覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで警視庁麻布署に現行犯逮捕された。9日午前2時20分ごろ、東京都港区西麻布に停車中の車内で覚せい剤約0・9グラム(袋込み)を所持した疑い。中村容疑者は当初「歯医者からもらった薬」と話したが、その後、容疑を認めた。昨年から押尾学被告、酒井法子さん(有罪確定)、赤坂晃被告らと続く芸能界の薬物汚染は、59歳のベテランボーカリストにも及んでいた。

 中村容疑者は9日午前0時半ごろ、西麻布2丁目の六本木通り沿いの交差点近くに停車した車内に1人でいた。不審に思った警察官が車中にいた中村容疑者を職務質問。助手席のフロアマットの下に小物入れがあり、中から覚せい剤が入ったビニール袋2つを発見した。同容疑者は袋の中を見ようとした警察官に「恥ずかしいものが入っているからダメだ」と拒否。見つかった覚せい剤については「歯医者からもらった薬」と説明したが、その場の簡易検査で覚せい剤と確認され、容疑を認めたため現行犯逮捕された。

 中村容疑者はこの日午前に麻布署から湾岸署に移送され、採尿して鑑定中という。麻布署は同容疑者の自宅などを家宅捜索し、使用の有無や入手ルートなどを調べる。10日に送検される。

 この日夜に会見した所属事務所フリーウェイの知久悟司社長(63=ギター知久光康の兄)によると、中村容疑者はここ1、2年無断遅刻することが多く、レコーディングでは「長い時で4、5時間の遅刻もあった」。昨夏から芸能人の薬物逮捕が続いた際、念のため中村容疑者に「薬はやってないだろうな」と聞くと「冗談じゃないですよ」笑って否定したという。

 JAYWALKは80年に結成され、91年に「何も言えなくて…夏」がミリオンセラー。92年にレコード大賞ゴールドディスク賞を受賞し、93年にNHK紅白歌合戦に初出場した。今年2月には結成30周年を飾る第1弾シングル「空と雲のように」を発売、5月から全国ツアーの予定だった。この日は新曲のプロモーションビデオの撮影を予定し、午前9時に中村容疑者以外の5人のメンバーがスタジオに集合したが、逮捕の報に全員が放心状態だったという。知久社長は今後の活動について解散は否定したが「中村耕一のいないJAYWALKは成り立ちません」と話し、休止状態になりそうだ。

 中村容疑者は3年前に乗用車内に刃渡り8・5センチのアーミーナイフを所持したとして銃刀法違反容疑で書類送検されたことがあるが、薬物のうわさはなかった。90年代に担当したレコード会社スタッフは「ミリオンヒットを出しても謙虚で誠実な人。急にハイテンションになるとか覚せい剤を使用した感じは一切なかった」と話した。90年前半に死別した妻との間に長男がいるが、交際中の名古屋市在住の女性がいるとの情報もある。

 芸能界では昨夏から元俳優の押尾被告、元女優酒井さんと元男闘呼組の成田昭次さん(ともに有罪確定)、元光GENJIの赤坂被告など薬物逮捕者が相次ぎ、警察庁長官が「芸能関係者は薬物事犯を一掃するよう真剣に取り組んでもらいたい」と異例の警告をした。今回は2月に59歳になったベテランにも薬物汚染が及んでいたことになり、91年に麻薬取締法違反で59歳6カ月で逮捕された故勝新太郎さんに続く高齢者の薬物逮捕に芸能界に衝撃が広がっている。

 [2010年3月10日9時16分

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